2013 Fiscal Year Research-status Report
ホヤ精子誘引物質の合成・分泌経路からみた誘引物質の種特異的分化機構の解明
Project/Area Number |
24651240
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 学 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60301785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 薫 桐蔭横浜大学, 先端医用工学センター, 講師 (70398973)
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Keywords | 受精 / 生体分子 / 生理活性 / シグナル伝達 / 生体生命情報学 |
Research Abstract |
多くの動物では、受精に先立ち、卵から放出される物質によって精子が誘引される。この精子誘引作用は多くの場合種特異的であると考えられる。しかしこの誘引物質の卵での合成・分泌経路は全く未知であるため、シグナル伝達系の普遍性と種特異性については全く不明である。 そこで本研究では、カタユウレイボヤ精子誘引物質SAAFの合成・分泌経路の解明を進め、さらに近縁他種の精子誘引物質を同定して比較することで、卵での精子誘引物質合成・分泌のメカニズムを解明すると同時に、種の多様性が生じるメカニズムについても迫ることを目標とする。 25年度は、24年度に引き続き、以下の3テーマについて解析を行った。 (1)カタユウレイボヤ卵におけるSAAFの合成系路の解明:25年度は、すでにクローニングを行ったSULT2A1の解析を進めると同時に、その他のSULTの解析を開始した。その結果、すでに同定していたSULT2A1が唯一のSULTではないことが明らかとなったため、カタユウレイボヤ卵巣で発現するSULTの網羅的な同定を試みている。これまでのところ、7つのSULT遺伝子の発現が確認され、クローニングを進めている。 (2)カタユウレイボヤ卵におけるSAAFの分泌調節機構の解明:24年度に引き続きVCP/p97の発現について、部位や時期などの詳細な解析を進めている。さらに、卵内で実際にSAAF放出に関わっているトランスポーターの同定を進めている。 (3) 精子走化性の分子機構における種特異性と普遍性の理解:25年度はカタユウレイボヤと近縁な種間における精子誘引作用の種特異性について、詳細に見直しを行い、ある特定の種間では片方向性の種間精子誘引が見られることが明らかとなった。また、引き続きPhallusia属の精子誘引物質の同定を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硫酸抱合を司る酵素であるSULTがカタユウレイボヤ卵巣から多数見つかり、SAAF合成に関わるSULTを同定しきれていないのは予測外であったが、多くの代謝経路に踏み込む足がかりとなったのは成果であるといえる。本研究は新規の開拓分野であり、それを踏まえればほぼ順調な推移であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は新規の開拓分野であり、すぐには成果が望めない。そのため、他の研究と共用できる部分はできるだけ共用し、効率的に最大限の効果が得られるように努力する。 平成26年度は最終年度であるため、同定されたSULTを足がかりにSAAFの合成系に関わる酵素を同定することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、充足率の関係で、研究後半に行われる本来必要な予算が得られていない。今年度は、エフォートが限られる中で研究遂行を行う必要があったため、遺伝子サンプル調製や、分子生物学的実験等の過程等で、PCRや電気泳動の際に空いているスロットを用いる等、他の研究との手順や使用試薬の共用化を最大限図り、予算執行の抑制を行った。 本研究では、研究後半に費用がかかる研究が計画されている。今回生じた次年度使用額は、最終年度となる26年度、メタボロー ム解析や抗体作成等、この費用がかかる研究の原資として有効に用いる予定である。
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Research Products
(9 results)