2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24651241
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
安部 聡 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (40508595)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 蛋白質結晶 / 細胞内結晶 / 多角体 / 昆虫ウィルス / 蛋白質結晶工学 |
Research Abstract |
タンパク質のナノ材料への固定化や保存の技術は、触媒やドラッグデリバリーなどへの応用が可能なため、高い注目を集めている。細胞質多角体病ウィルスに感染した昆虫細胞は、ウィルス粒子の複製と同時に多角体とよばれる蛋白質(ポリヘドリン)を内部で合成し、多数のウィルス粒子を内包した多角体結晶を作成することにより、ウィルス粒子の長期保存を可能にする。この多角体のウィルス内包機能を利用することにより、様々な蛋白質を多角体内部に固定化した固体材料の構築が期待できる。しかしながら、多角体蛋白質とウィルス粒子の相互作用や取り込み機構は未解明であり、効率よく外来蛋白質を取り込むことは困難である。本研究では、多角体結晶のウィルス内包機構に着目し、ウィルス粒子が多角体結晶に取り込まれる分子機構と結晶化機構を解明する。 本年度は、細胞質多角体病ウィルスに感染した蚕の中腸細胞の内部構造と多角体の表面構造観察を各種顕微鏡観察により行った。 多角体の表面構造を原子間力顕微鏡で観察したところ、ウィルス粒子が抜けおちた穴が観察されその深さから50nm程ウィルス粒子が表面に埋め込まれていることがわかった。また、多角体の表面構造観察からポリへドリン分子が規則正しく配列し、そのステップの高さや粒子間の距離からポリへドリン3量体がビルディングブロックとなっていることを明らかにした。 また、蚕の中腸細胞の電子顕微鏡観察からウィルス粒子が多角体に取り込まれる過程の構造観察に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、細胞内結晶である多角体結晶のウィルス粒子の長期保存機構解明のため、多角体タンパク質の結晶化やウィルス粒子取り込み過程を明らかにする。本年度は、当初の計画では困難と考えていた細胞質多角体病ウィルスに感染した蚕の中腸細胞の詳細な構造観察に成功し、細胞内部でのウィルス粒子の取り込み過程と多角体結晶内部のウィルス粒子の固定化構造を明らかにしたことから当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、細胞質多角体病ウィルスに感染した蚕の中腸細胞の電子顕微鏡観察よりウィルス粒子の取り込み過程と多角体結晶内部のウィルス粒子の構造観察に成功した。次年度は、多角体の結晶化機構の解明と外来タンパク質固定化過程の観察によりウィルス保存機構の解明を行う。具体的には、まず、溶解した多角体蛋白質の集積過程をマイカ基板上に再現し、原子間力顕微鏡の時間追跡測定により集積過程を明らかにする。また、細胞培養を用いて多角体の結晶化および外来蛋白質取り込み観察を共焦点レーザー顕微鏡を用いて行う。外来蛋白質としてEGFPを用いて、時間経過観察を行うことでEGFPの取り込みを観察する。 以上の多角体の細胞内とin vitroでの集積過程を観察することにより多角体のウィルス保存機構を明らかにし、得られた成果を学術論文、学会等で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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