2012 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質ドメインの鏡像体を利用したマンノースレセプター設計の新戦略
Project/Area Number |
24651248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 優 独立行政法人理化学研究所, 伊藤細胞制御化学研究室, 専任研究員 (90452284)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生理活性 / 蛋白質 / 糖 / 有機合成 |
Research Abstract |
マンノース受容体とは,D-マンノースを特異的に認識する分子の総称である.近年,マンノース受容体は,極めてユニークな抗 HIV 活性を示すことが明らかにされたが,既存のマンノース受容体は医薬のリードとして適していないため,新規抗 HIV 薬の開発研究は停滞している.本研究では,L-ラムノースが 6-デオキシ-D-マンノースの鏡像体であることに着目し,全く新しいマンノース受容体として,ナマズ由来ラムノース結合性タンパク質 (SAL) のラムノース結合ドメインの「鏡像体」を合成することを目的とした. SAL は 95 残基からなる 3 つのラムノース結合ドメイン (SAL-D1, D2, D3) を有する.本年度は,「鏡像体」合成の候補ドメインを選定するために,それぞれのドメインの化学合成を試みた.まず,SAL-D3 の合成を Fmoc 固相合成によるステップワイズ法で行なったところ,様々な長さのペプチドの混合物を与え,目的のペプチドを得ることはできなかった.そこで,native chemical ligation によるフラグメントカップリング法を試みるために,N 末端 47 残基のペプチドの合成を試みたところ,16 残基で伸長が止まったペプチドがメインに得られることが判明した.この原因として,近傍に存在するプロリン 2 残基がペプチドの伸長を阻害する二次構造に固定していることが考えられた. そこで,配列上プロリン残基が近傍に存在しない SAL-D2 にターゲットを換え,pseudoproline dipeptide を用いてペプチド伸長に有利な二次構造を取りやすくした状態で合成を進めたところ,N 末端 47 残基のペプチドを合成することに成功した.現在,残りの C 末端 48 残基のペプチド合成を進めているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,SAL のいずれかのドメインの合成を完了する予定であったが,現在のところ,ドメインの半分にあたるペプチドの合成しか完了していない.その理由としては,合成ペプチドの溶解性が予想以上に悪く,通常のペプチド精製法を適用することができなかったことが挙げられる.しかしながら,本年度の間に合成ペプチドの切り出しと脱保護,および精製条件を確立できたため,今後は効率的にペプチド合成を進めることができると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,SAL-D2 の C 末端 48 残基のペプチドを調製し,native chemical ligation によるフラグメントカップリング法によって,全長 95 残基のペプチドの合成を完了させる.合成したペプチドについて,種々の条件でジスルフィド結合形成を行ない,フォールディングを試みる.正しくフォールディングされたかどうかは,L-ラムノース結合活性で確認する.L-ラムノースとの結合が認められた場合は,L-マンノース結合活性を評価し,「鏡像体」合成の候補となることを確認する.なお,結合試験は,等温滴定カロリメトリー (ITC) を用いて行なう予定である. L-マンノースとの結合が認められた場合は,D-アミノ酸を用いて,SAL-D2 の「鏡像体」を合成する.合成した「鏡像体」ペプチドについて,D-マンノースを含む様々な天然単糖に対する結合活性を測定し,D-マンノースに対する結合活性と結合選択性の両面から,マンノース受容体としての基本的性質を評価する.「鏡像体」がマンノース受容体となることが確認された場合は,高マンノース型糖鎖に対する結合活性を評価し,抗 HIV 薬のリードとなりうるかどうかについて検証していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は研究の進展がやや遅れてしまったために,本年度使用予定であった D-アミノ酸を購入しておらず,その購入費 (204,244円) は次年度に合わせて使用する予定である. 次年度の物品費は,主にペプチド合成用のアミノ酸,試薬および HPLC 用のカラムの購入に使用する.なお,ペプチド合成は京都大学大学院農学研究科で行なうことを予定しているため,旅費は主として京都大学への出張費に使用する.また,研究成果が出た場合は,学会発表を行なう予定であるため,学会出張費にも旅費を使用する予定である.
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