2013 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質ドメインの鏡像体を利用したマンノースレセプター設計の新戦略
Project/Area Number |
24651248
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 優 独立行政法人理化学研究所, 伊藤細胞制御化学研究室, 専任研究員 (90452284)
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Keywords | 生理活性 / タンパク質 / 糖 / 有機合成 |
Research Abstract |
マンノースレセプターとは,D-マンノースを特異的に認識する分子の総称である.近年,マンノースレセプターは,極めてユニークな抗 HIV 活性を示すことが明らかにされたが,既存のマンノースレセプターは医薬のリードとして適していないため,新規抗 HIV 薬の開発研究は停滞している.本研究では,L-ラムノースが 6-デオキシ-D-マンノースの鏡像体であることに着目し,全く新しいマンノースレセプターとして,ナマズ由来ラムノース結合性タンパク質 (SAL) のラムノース結合ドメインの「鏡像体」を合成することを目的とした. SAL は 95 残基からなる 3 つのラムノース結合ドメイン (SAL-D1, D2, D3) を有する.昨年度は合成上の観点から「鏡像体」合成の候補ドメインとして SAL-D2 を選定し,その C 末端 47 残基のペプチドを合成した.そこで本年度は,本ペプチドを基にして,native chemical ligation によるフラグメントカップリング法で SAL-D2 に導く合成計画を立てた.SAL-D2 の N 末端 48 残基を 4 つのフラグメントに分割し,6, 8, 20, 14残基からなるペプチドチオエステルの合成を行なった.その後,native chemical ligation によるフラグメントカップリングを行ない,得られた SAL-D2 が L-マンノースを結合するかどうかを等温滴定カロリメトリー (ITC) で評価する予定であったが,超高感度等温滴定型カロリメーターが長期に渡って故障したため,研究は中断状態にある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は,SAL-D2 が L-マンノースを結合するかどうかを ITC で確認した後,SAL-D2 の「鏡像体」の合成を行なう予定であった.しかしながら,ITC 測定のための超高感度等温滴定型カロリメーターが長期に渡って故障したため,SAL-D2 の L-マンノース結合活性を評価することができず,「鏡像体」の合成に着手することができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,超高感度等温滴定型カロリメーターの修理が完了し,研究再開が可能な状況にある.今後は,SAL-D2 が L-マンノースを結合するかどうかを ITC で確認する.L-マンノースとの結合が認められた場合は,D-アミノ酸を用いて,SAL-D2 の「鏡像体」を合成する.合成した「鏡像体」ペプチドについて,D-マンノースを含む様々な天然単糖に対する結合活性を測定し,D-マンノースに対する結合活性と結合選択性の両面から,マンノースレセプターとしての基本的性質を評価する.「鏡像体」がマンノースレセプターとなることが確認された場合は,高マンノース型糖鎖に対する結合活性を評価し,抗 HIV 薬のリードとなりうるかどうかについて検証していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度前半に使用予定であった超高感度等温滴定型カロリメーターが2013年2月に故障し,使用不能となった.すぐに修理を依頼したものの,故障原因が2013年12月まで特定されず,研究が長期間に渡って停滞した.それに伴い,未使用額(1,100千円)が発生した. 現在,超高感度等温滴定型カロリメーターの修理が完了し,研究再開が可能な状況にある.そこで,未使用額は本年度購入を予定していたアミノ酸,試薬,HPLC用カラムの購入に使用するとともに,本研究ではペプチド合成を京都大学で行なうことを計画しているために京都大学への出張費に使用する.研究成果が出た場合には,学会出張費にも使用する予定である.
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