2012 Fiscal Year Research-status Report
網羅的遺伝子解析による褐虫藻動態解明~「サンゴ-褐虫藻」共生系研究の新戦略提案~
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24651267
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
久保田 賢 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (00314980)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 造礁サンゴ / 褐虫藻 / クレード / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
本研究では,造礁サンゴに共生する褐虫藻の存在割合を知るとともにその手順化を図ることを目的としている。初年度である平成24年度は,同時に多量の遺伝子配列解読を可能とする次世代シーケンサーを用いた造礁サンゴ中の褐虫藻の解析を行ない,多種の褐虫藻の同時検出の可能性について検討した。 高知県大月町西泊で採取した3種の造礁サンゴよりゲノムDNAを抽出した。リボソームDNAの LSU領域の増幅プライマーを用いてPCR-Libraryを作製し,次世代シーケンサーを用いて,配列を解読した。 各2群体から2試料を採取したエンタクミドリイシおよびクシハダミドリイシについては,優先種のクレードC配列が70.3%~88.7%を占めた.エンタクミドリイシの1試料については約10%を占める配列が2種類見出されたが,それを除いては2番目の優先種と合わせて95.6%~98.8%に上った。一方,カワラサンゴ試料について,60,000 reads以上を解読した場合,200 reads以上のクレードCの配列が60種確認された。その存在比は高い順から39.8%,9.8%,9.2%,6.2%であり,その他の56種は5%未満であった。200 reads未満の配列は,6.2%に過ぎないものの3,800 readsに上った。以上の結果から,造礁サンゴ中では数種類の配列を持つ褐虫藻が多くを占めるものの,ポピュレーションの低い褐虫藻も相当数共存している可能性が示された。 当初の計画では,この方法を適用して異なった環境やサンゴの種による違いを検出する予定であったが,検出後のデータ処理についての効率的な手順化を図ることが不可欠と判断し,その方法について情報収集を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で目的としている,1. 造礁サンゴに共生する褐虫藻の存在割合を知ることと2.その手順化を図ることのうち,1.については,単一試料から複数の配列が検出されたため,研究遂行の目処が立った。しかしながら,手順化を図る上で,次世代シーケンサーから排出される多量のデータを効率的に処理する方法について,更なる検討が必要であることが判明した。この分野については,多くの研究成果が現在蓄積されている最中であり,平成25年度にその適用例が発表されることとなっているため,この部分についての研究の進捗がやや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
複数試料の分析に着手する前に,平成24年度に分析を行なったデータセットを用いて,データ解析の手順化を図ることを試みる。本研究で対象としている褐虫藻のような微細藻類に関する先行事例は少なく,主に腸内細菌等のバクテリアを対象としていることから,DNA配列データベースの構築から開始することとなる。 また,複数の造礁サンゴ試料について,どのような条件比較が適切かについても,改めて情報収集を行ない,環境指標の測定を開始しつつ試料採集を実施する。このような準備に基づき,平成25年度は本格的な分析を推進する予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に実施する予定であったものの,分析の手順化の遅れから着手できなかった複数試料のDNA配列解析を実施するための試薬および機器使用料の支出が見込まれている。また,環境指標の測定のために,海水中への機器購入および設置も進める予定にしている。
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Research Products
(1 results)