2012 Fiscal Year Research-status Report
地域情報学の手法を用いた海域東南アジアにおける境域社会の動態の解明
Project/Area Number |
24651278
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 和佳 北海道大学, 大学院教育学院, 准教授 (90334218)
赤嶺 淳 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (90336701)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 海域東南アジア / 境域社会 / 地域情報学 / 人口移動 / 民族間関係 |
Research Abstract |
研究メンバーは、5月、東洋大学アジア文化研究所において、本プロジェクトの目的、方針、計画を確認し、今年度の調査と作業の予定について検討した。打合せでは、海民・海域の時空間情報データ・ベースと資料集『海域東南アジアの境域社会の動態に関する資料集成』の項目選定作業も行った。8月には、全員でアテネオ・デ・マニラ大学フィリピン研究センター、フィリピン統計局(NSO)、フィリピン地図局(NAMRIA)を訪問し、同国の海民に関わる電子版センサス、人口移動・資源利用・民族間関係に関わるその他のデータ、地図データに関する調査を実施、必要なデータを購入した。同時に、海民研究の専門家に、関連する時空間データの整備・利用環境を尋ね、また情報共有のための手法について検討した。代表者の長津は、インドネシアの統計局(BPS)においても同国の海民に関する時空間データを収集した。 年間を通じた活動として長津は、島嶼部3ヵ国全体の海民に関わる人口動態を、植民地期および近年のセンサスを用いて画像化・空間情報化した。これに人口移動や文化要素の分布等をあわせ、島嶼部三カ国全体の海民の社会文化動態に関する基礎データの整理を進めている。青山は、フィリピン・メディア(とくに新聞)に表象されるサマ人関連の情報を収集し、そのデータ・ベースの構築に着手した。赤嶺は、自らがこれまで収集してきたサマ諸語の言語データと画像資料の電子化を行った。言語データはエクセルに、画像資料はJPEGにそれぞれ変換した後、撮影日、撮影場所、説明の3点についてのデータを整理中である。これらの作業に基づく各自の成果は、8月のアテネオ・デ・マニラ大学の研究会(全員)や、2月の京都の国際研究会(長津、赤嶺)で、それぞれ報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査研究活動はおおむね予定通り進行している。ただし、予定されていた一部のフィールド調査(マレーシア)は実施されなかった。その担当者である赤嶺は、2013年度後半、マレーシア・サバ州に長期滞在する予定であるため、同期間中に同州の海民の社会動態に関する時空間データを収集することになる。また、2012年度に作成が予定されていた『海域東南アジアの境域社会の動態に関する資料集成』の暫定版を年度内にまとめることができなかった。同年度中に必要な資料はほぼ収集しており、各メンバーによるその整理も進められたが、それまでの段階のすべてのデータを編纂するまでには至らなかった。代表者とメンバーは、2013年中に原稿・データの整理を終えるべく尽力し、校正を加え、2013年度内に『資料集成』を完成させる。
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Strategy for Future Research Activity |
5月、東洋大学において、昨年度の成果に関する報告、ならびに今年の調査計画に関する打ち合わせを実施する。この時までに各メンバーは、『海域東南アジアの境域社会の動態に関する資料集成』用の各自の原稿のアウトラインをまとめておく。焦点は、島嶼部三カ国の海民の移動、資源利用、民族間関係の三点におかれる(インドネシア:長津、フィリピン:青山、マレーシア:赤嶺)。 青山は、昨年度に計画されていた資料収集とフィールド調査をおおよそ終えている。今年度は、主にそのデータの整理を進める。長津は夏期休暇にインドネシア・東ジャワ州カンゲアン諸島において、赤嶺は年度後半の長期滞在中にマレーシア・サバ州クダト郡においてそれぞれフィールド調査を実施する。調査は、主に次の点に関する聞き取りおよび在地文書等の閲覧を中心とする。(1) 村落形成史、住民の移住史、経済活動の移動圏、通婚圏、(2) 海産資源利用の形態と類型、資源の利用・管理とエスノ・ネットワーク、(3) 通婚や社会経済関係にみる民族間関係、エスニック・ラベル等による自己表象、他者表象、(4) 各トピックの歴史的変化と民族間の差異。これらの研究活動に基づいて、最終的には『海域東南アジアの境域社会の動態に関する資料集成』の完成版を作成し、同時に『資料集成』のデータを中心とするデータベースの公開運営を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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