2012 Fiscal Year Research-status Report
ポスト興行ビザの人の移動および社会統合政策に関する研究
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24651285
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安里 和晃 京都大学, 文学研究科, 准教授 (00465957)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 移民 / 母子 / フィリピン / 社会統合 / 排除 / 結婚移民 |
Research Abstract |
本研究は興行ビザとそれに関連して結婚移民として来日した人々(主にポスト興行ビザ)を対象とし、国際移動メカニズムと制度およびそれが規定する当事者の生活実態について明らかにし、社会統合(包摂)の状況について検討することを目的としている。より具体的には①ポスト興行ビザの人の移動の展開(国際結婚、偽装結婚、新日系人と母親)、②生活実態と問題点(就業、医療・福祉、教育)といった社会統合(社会的包摂)に着目し、③移動から定着の過程を検討の範囲とする。当該年度においては、こうした移動から定着過程に至るマルチステークホールダーからの聞き取りを通じ多くが明らかになった。第1にプロモーターなど業界団体、ブローカーや入国管理局職員、フィリピン大使館員らに対する聞き取りから、移動過程や興行ビザのメカニズムについて明らかにすることができた。そこでは階層と移動が大きく関連しあっていることが推測された。第2にポスト興行ビザに関し、第1に加えフィリピン政府在外フィリピン人委員会や当事者からの聞き取りなどを通じ、特に母子が移動を通じて抱える問題点について検討した。第3に日本における包摂や定着過程については、就労現場や教育現場における聞き取りや支援を通じて、子どもの教育現場における定着状況の問題点について検討した。単に言語や文化の違いだけではなく、母子のおかれた環境によって母親自身が不安定であること、フィリピンとの往来を前提とした就労・教育であること、日本における社会統合政策がこうした人々を組み込んでいないことといった複合的な理由により定着家庭における問題が生じていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.マルチステークホールダーへのアプローチに関しては、プロモーター、ブローカーをはじめ、フィリピン系結婚移民、入国管理局(元)職員、人材育成会社など多様な関係者にインタビューを行うことができた。 2.フィリピン政府在外フィリピン人委員会といった政府機関に対しても十分なコミットメントが可能であった。 3.日本における就労や教育現場へのアプローチを通じて社会統合上の問題について考察することが可能であった。 4.当初は想定していなかったフィリピン政府や地方自治体などとの協働が始まりつつあり、単なる学術研究ではなくなってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は結婚移民の社会統合を考えるにあたって、母親の場合には特に就労現場から、また子どもの場合には教育現場から検討を進める必要がある。 フィリピンにおける潜在的な結婚移民に対するアプローチは容易なことではない。というのも身分に基づく移動は自由な移動が認められているからである。したがって、現場から把握することによってしか理解されないことが多々見られるようになっており、現場へのアプローチと協働が一層求められる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内旅費:プロモーター、ブローカー、入国管理局、教育現場、就労先、当事者などからの聞き取りを継続する。教育、雇用については特に力を入れる。 海外旅費:フィリピン出張、国際会議など。 謝金:インフォーマントや研究補助者に対して支出予定あり。 物品、その他:大きな支出予定なし。
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