2014 Fiscal Year Annual Research Report
慈雲著『法華陀羅尼略解』をめぐる文献学的ならびに密教史学的研究
Project/Area Number |
24652008
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
秋山 学 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80231843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 佳奈子(吉森佳奈子) 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10302829)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 慈雲 / 『法華陀羅尼略解』 / 『神儒偶談』 / 菴摩羅識 / 高天原虚空観 / 法界体性智 / 瞽者 / 尚古主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
筑波大学附属中央図書館に所蔵される慈雲(1718-1804)最晩年の直筆本『法華陀羅尼略解』(1803年3月4日校了)には,計六陀羅尼より成る「法華陀羅尼」のうち「普賢陀羅尼」への略解の冒頭に「人法二空」「断習気」といった唯識学による注記が認められる.慈雲は,これに先立ち『雙龍大和上垂示』の一篇(1796年2月8日)の中で『成唯識論』に言及し,唯識学は『倶舎論』の六識に加え末那識,阿頼耶識を説いて八識とするが,密教ではさらに第九識たる「菴摩羅識」を説くと述べている.慈雲はこの垂示において,神道の国常立尊は阿頼耶識に,天御中主尊は菴摩羅識に当たると理解するが,『古事記』によれば,天之御中主尊は高天原に成った神である.一方,慈雲80代の著書『神儒偶談』には,神道における高天原が,仏道にあって持戒の場とされる虚空に相当するという「高天原虚空観」が繰り返し述べられている.密教において「菴摩羅識」は,金剛界五仏のうち中央の大日如来に,また五智のうち究極の「法界体性智」に対応するが,これらは「自性清浄心」と換言できる.一方『論語』衛霊公篇第15-42他には,孔子が「瞽者」つまり盲目の「冕」に対し,最高の敬意をもって接したことが記されているが,これは彼が,瞽者のうちに留められている「道統」を最大限に尊んだことを意味するものである.つまり孔子は,瞽者こそ儒教の原点たる「尚古主義」の体現者であると認識していた.瞽者は,前五識の筆頭たる眼識をも欠くものの,それだけに彼らの地上での生は,言わば「菴摩羅識」に基づくものだと理解できる.おそらく慈雲は,儒教における尚古主義のうちに,こうして神道・仏教に通じる「高天原虚空観」との,また密教における「法界体性智」との共通性を見出していた.われわれは,慈雲最晩年の著書『法華陀羅尼略解』のうちに,儒・仏・神そして密教の交差する地平を見ることができるのである.
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Research Products
(13 results)