2014 Fiscal Year Research-status Report
「隣人愛」の再定義:文献研究と生態心理学実験に基づくキリスト教的倫理研究
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24652010
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
柳澤 田実 関西学院大学, 神学部, 准教授 (20407620)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 倫理 / 利他性 / 生態心理学 / 行為 / 目的 / 協力 / 知覚 / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、これまでの文献調査の結果と今後の実験への展望を「利他性への生態学的アプローチ」としてまとめ、7月の日本生態心理学学会にて発表した。心理学者マイケル・トマセロを筆頭に、利他的行為、協力的行為の定義には、「目的の共有」が前提となっていることが多い。しかし、生態心理学の成果を前提とするならば、行為の目的とは、必ずしも自明なものではない。この研究発表によって、そもそも行為の目的の知覚、認知とはどのように可能になり、またその目的の他者との共有とはどのように可能なのかについて、今後研究していく方針が明確になった。 春学期中には、指導および専門的知識を提供いただく三嶋博之教授(早稲田大学人間科学学術院)のゼミナールに参加し、アイマークカメラの講習を受講した。 また秋以降には、協力的行為を作品のテーマとしている、アーティストの田中功起の映像作品の分析を通じ、協力的行為において明確な目的の共有は必ずしも必要ではないこと、またそもそも行為の目的と言った場合にも、様々なレベルがあり、そのレベル分けの明確化と整理が極めて重要であることが明らかになった。この内容は「善い話をやめる」という論文としてまとめられ『神学研究』第62号(関西学院大学神学部編)に掲載された。 以上の内容をふまえた実験として、子供の徒競走の学習過程を観察するという計画を立て、年度末の3月には三嶋博之教授(早稲田大学人間科学学術院)にその旨を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、利他的行為、隣人愛に関する研究を実験にまで落とし込み、実験に基づく実証研究と文献研究との総合を目指している。研究協力者から実験手法について指導していただく予定であったが、研究協力者との都合が合わず、実験手法の学習、実験の実施が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は延長した上での最終年度となるため、夏期休暇が終わるまでには観察・実験を実施する。また観察および実験の成果をふまえ、協力的行為、利他的行為について研究している霊長類研究者との交流を行い、より精緻に理論化するように努める。そして、その内容を論文としてまとめ、日本生態心理学会あるいは日本倫理学会の学会誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
研究協力者との都合が合わず、予定していた実験を実施することができなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に関する専門的知識を得るために早稲田大学人間科学学術院に出張する際の旅費、実験に関する諸経費(謝金、交通費など)で使用する予定である。
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