2012 Fiscal Year Research-status Report
スペイン・ルネサンス思想研究における文献学的実証分析
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24652017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
安藤 真次郎 龍谷大学, 文学部, 教授 (70309110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 竜仁 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (70405364)
岡本 信照 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90309518)
立岩 礼子 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (80321058)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ネブリハ / 国語形成 / ビーベス / 人文主義 / フライ・ルイス・デ・レオン / エラスムス / エルナン・コルテス / ユートピア |
Research Abstract |
3年間の研究期間の初年度にあたる今年度は、(1)国内外での関係資料及び文献の蒐集、(2)研究会の開催、(3)研究成果の一部の発表、が主たる活動であった。 (1)海外での関係資料及び文献の蒐集については、当初の予定通り、安藤、野村、岡本はスペイン、立岩はメキシコへ渡航して行った。費用については、岡本は科研費を利用しての渡航であったが、安藤、野村、立岩は別の研究費を利用した。国内での関係資料及び文献の蒐集については、大学図書館、専門書店などを通して行った。 (2)研究会については、当初年4回ほど開催することを計画していたが、各自の公務などの関係で日程調整が難航したため、2回(京都・神戸)実施するにとどまった。しかし開催した研究会においては、各自の研究テーマの理解を深め合うとともに、スペイン・ルネサンス思想の特徴についての活発な意見交換ができ大きな成果がみられた。また今後の研究方針及び研究計画についても具体的な話し合いを行った。 (3)各自の研究成果は、安藤、岡本は国内の研究雑誌に研究論文発表、野村はスペインの研究雑誌に研究論文発表、立岩は国内学会での口頭発表を行った。 なお、研究費の主たる使用用途は、安藤は資料文献と電子機器の購入、岡本は資料文献の購入とスペインへの渡航費、野村は資料文献と電子機器の購入、立岩は資料文献の購入であった。岡本と立岩は初年度の研究費予算をほぼ全額執行したが、安藤と野村は全額執行するに至らず次年度への持越しとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、15・16世紀のスペインが直面した言語問題、教育問題、宗教問題、歴史問題を当時の代表的な思想家たちの著作を通じて文献学的に実証することでスペイン・ルネサンス思想の本質および独自性を明らかにするとともに、ヨーロッパ思想史とラテンアメリカ思想史におけるスペイン・ルネサンス思想の位置付けを再検証することである。この研究目的を達成するために今年度は各テーマについて以下のような研究を実施した。 【言語問題】ネブリハのラテン語による聖書釈義書、およびシスネロス枢機卿に宛てた『弁明書』の分析を通じて、ルネサンス期におけるラテン語純化論の一側面を明らかにした。さらに、この言語観は俗語文法創出の根底にある言語思想と同一延長線上にあったのではないかとの結論に至った。(担当:岡本) 【教育問題】ビーベスの初期の代表作である『偽論理学者弁駁』(1520)の分析を通して、彼の人文主義的教育思想の出発点が当時のパリ大学で主流となっていた中世後期論理学への批判にあったということを明らかにした。(担当:安藤) 【宗教問題】日本ではエラスムスとセルバンテスの関係への言及は必ずしも多くないものの、個別には様々な角度から論じられている。これらの先行研究の検証から、エラスムスとセルバンテスがある種の聖なる狂気を描いていることがわかる。そこには、諧謔を持ってみずからの理想と対峙する、自己批判的な姿勢が投影されていると考えられる。(担当:野村) 【歴史問題】ラテンアメリカにおけるスペイン・ルネサンス思想の体現者としてのエルナン・コルテスに関する国内外の先行研究の精査を中心とした。コルテスのルネサンス的要素はメキシコ征服および統治のみならず、アジア航路開拓にも現れているとの仮説を立てるに至った。(担当:立岩)
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Strategy for Future Research Activity |
次年度についても今年度と同様に4つの分野から研究を進めていく方針である。 【言語問題】ルネサンスにおける国語形成の要因として、15世紀の宮廷における古典語からの翻訳活動について調査し、さらには黄金世紀文学の基盤となった俗語擁護論の発生と展開を追跡する。(担当:岡本) 【教育問題】スペインでは16世紀前半にカール5世の宮廷の知識人層を中心に、エラスムスの「キリストの哲学」の思想の影響がみられた。このエラスムスの思想がスペインにおけるキリスト教的人文主義の発展にどう関わっていったのかについて、エラスムスの『エンキリディオン』(1503)やバタリョンの『エラスムスとスペイン』(1937)の分析を中心に考察していく。また今年度に引き続き、ビーベスの教育論について考察していくが、その考察対象は彼の主著である『学問論』(1531)で、そこにみられる人文主義的な教育思想の特徴を明らかにしていく。(担当:安藤) 【宗教問題】今年度は、一昨年に本計画の準備段階として行った研究(「『キリストの御名について』とユダヤ的諸相に関する一考察」『神戸外大論叢』62巻所収)を発展させ、フライ・ルイス・デ・レオンの作品『キリストの御名について』を中心に、その中で示される自然観と、ヘブライ語に対する文献学的なアプローチとの関係性の有無について検討する。(担当:野村) 【歴史問題】ラテンアメリカにおけるルネサンスの影響をエルナン・コルテスの都市計画および初代副王アントニオ・メンドーサによる大学および印刷所の設置を通して考察する。それに伴い、先住民へのスペイン語教育についても調査対象とし、文献調査を進める。(担当:立岩)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【設備備品費】本研究は文献学的実証を通しての分析が中心となるため、次年度も今年度に引き続き、国内外での西洋思想関係の資料及び文献の蒐集が研究費の主な使いみちとなる。 【旅費】海外渡航費については、今年度も8月と9月もしくは2月と3月にスペインおよびメキシコの図書館等において資料蒐集を行う必要があることから、そのための渡航費(スペイン往復航空券またはメキシコ往復航空券。さらに10日ほどの現地滞在費)を計上する。 また国内旅費については、国内学会発表の旅費を計上する。 【人件費・謝金】蒐集した関連資料及び文献の整理等の作業補助のため、アルバイト経費(1名、2ヶ月程度)を計上する。
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Research Products
(4 results)