2013 Fiscal Year Research-status Report
スペイン・ルネサンス思想研究における文献学的実証分析
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24652017
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
安藤 真次郎 龍谷大学, 文学部, 教授 (70309110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 竜仁 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (70405364)
岡本 信照 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (90309518)
立岩 礼子 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (80321058)
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Keywords | ネブリハ / 国語形成 / ビーベス / 人文主義 / フライ・ルイス・デ・レオン / エラスムス / エルナン・コルテス / ユートピア |
Research Abstract |
3年間の研究期間の2年目にあたる今年度は、(1)国際学会における研究成果の一部の発表、(2)研究会の開催、(3)国内外での関係資料及び文献の蒐集、が主たる活動であった。 (1)ナバラ大学(スペイン)と京都外国語大学共催の「II Congreso Ibero-Asiatico de Hispanistas(第2回イベロ・アジアにおけるスペイン語圏研究学会)」において、「Aproximacion al pensamiento renacentista espanol a traves de las obras de Nebrija, Luis Vives, Luis de Leon, Cortes y el Inca Garcilaso de la Vega(スペイン・ルネサンス思想:ネブリハ、ビーベス、ルイス・デ・レオン、コルテス、インカ・ガルシラソ)」というタイトルのパネルを企画・発表した。我々4名の研究グループに加え、ウイスコンシン大学マジソン校(米国)のマルガリータ・サモラ教授を同パネルに招聘した。このパネル形式での発表は、同学会においてその分析の論点と手法において高い評価を獲得した。 (2)研究会については、当初の計画通り年間を通して4回(神戸1回、大阪3回)開催することができた。開催した研究会においては、(1)の学会発表の準備を具体的に進めるとともに、各自の研究テーマの理解を深め合いながら、スペイン・ルネサンス思想の特徴についての活発な意見交換をすることができた。また最終年度に向けた研究方針と具体的な研究計画を確認した。 (3)海外での関係資料及び文献の蒐集については、立岩がスペイン及びメキシコで行った。安藤、岡本、野村は国内での大学図書館、専門書店を通して関係資料及び文献の蒐集を行った。 なお、研究費の主たる使用用途は、安藤、岡本、野村は資料文献の購入、立岩はスペイン及びメキシコの滞在費であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【言語問題】15世紀スペインのフアン2世の宮廷におけるギリシア・ローマの古典文献翻訳の状況を分析し、そうした翻訳活動がスペインにおける人文主義の普及に寄与したと同時に、国家語としてのカスティーリャ語形成の基盤となったことを明らかにした。さらに、16世紀にフアン・デ・バルデスをはじめとして、多くの文人・学識者が関与した俗語擁護論の発展と系譜関係をたどり、黄金世紀文学隆盛の基盤を見出した。 【教育問題】16世紀の人文主義者ルイス・ビーベスの人文主義的教育論について、彼の主著である『教育論』『弁論法について』の分析を通して行った。ビーベスによれば、人文主義的教育とは主にレトリックと倫理学に基づく教育であり、その目的は実践知を身につけるとともに共通善を目指すものであることを指摘した。 【宗教問題】16世紀スペイン文学の特徴の一つとして、牧歌文学の隆盛を挙げることができる。『キリストの御名について』の作者フライ・ルイス・デ・レオンは詩人としても名を馳せた人物であり、牧歌の源泉であるウェルギリウスの『牧歌』のスペイン語訳なども手がけている。『御名』は厳密な意味での牧歌や牧人小説ではないが、その牧歌的な側面を論じた先行研究もあり、それらを踏まえ、『御名』のもつ牧歌的な要素とその自然観との関係について、文献学的な視点から考察を加えた。 【歴史問題】ラテンアメリカにおけるルネサンスの影響を初代司教スマラガを通して考察した。また、先住民へのスペイン語教育とその成果についても考察を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる今年は、過去2年間に行ってきた研究成果をまとめ、研究成果報告書を作成することが主たる目的である。当初は最終年度に国際学会での研究成果発表を計画していたが、2年目にあたる昨年度にすでにその目標を達成したため、今年度は全員そろっての学会発表は予定していない。各自の具体的な研究目標は以下の通りである。 【言語問題】過去2年間で行ってきたネブリハの言語学関連著作の分析に加え、聖書釈義書のさらなる分析を通じて彼の言語思想をまとめ上げる。同時に、16世紀の俗語擁護論の展開についてさらに考察を深める。 【教育問題】過去2年間に行ってきたルイス・ビーベスの人文主義的教育論の研究をさらに発展させるとともに、16世紀前半のスペインの人文主義運動に見られるエラスムス思想の影響について考察を加える。 【宗教問題】今年度は、2011年度に本計画の準備段階として行った研究(「『キリストの御名について』とユダヤ的諸相に関する一考察」、神戸外大論叢62所収)及び昨年度の研究を発展させ、フライ・ルイス・デ・レオンの『キリストの御名について』を核として、スペイン・ルネサンスにおける宗教問題としての諸相を概観するとともに、その独自性について検討する。 【歴史問題】ユートピア思想とエルナン・コルテスによるメキシコ市都市計画及び先住民村落との関連を考慮し、研究をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初3年目に予定していた国際学会での発表を、一年繰り上げて2年目に実施することとなった。しかし、その開催地がスペインではなく京都となったため、夏季に予定していたスペインへの渡航を実施しなかったため。 研究成果出版にあてるとともに、昨年度に実施できなかったスペイン・イギリスなどでの資料蒐集を行うために使用する。
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Research Products
(7 results)