2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける国号絵画と模写―1945年以降の日本画、韓国画、中国画を対象に
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24652019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
荒井 経 東京芸術大学, 美術研究科, 准教授 (60361739)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
5月、6月に渡航した韓国・ソウルにおいて、誠信女子大学、ソウル大学、弘益大学、同徳女子大学、高麗大学をはじめとする複数の大学教員や画家たちとの交流を行い、東洋画(韓国画)の変遷と現況について様々な情報と意見を聴取することができた。また、研究上のキーパーソンとなる千鏡子の作品をソウル市立美術館で実見するとともに画集等の資料を収集することができた。これらの資料については、帰国後に翻訳を依頼して内容の整理を進めている。1月には、韓国の主要美術大学である弘益大学から李宣雨教授を招聘して、東洋画における模写の位置づけを中心とした情報と意見を聴取するとともに、研究代表者との公開対談を実施(1月28日 東京芸術大学)して美術関係者への問題提起を広くおこなった。これ以外にも韓国については、別件で招聘を受けたソウル大学において情報収集ができたほか、来日した誠信女子大学の李晩洙教授、高麗大学の鄭鐘美教授と交流して意見交換をおこなった。 台湾については、膠彩画に関する資料を収集して翻訳を依頼し、内容の整理を進めた。特に台湾については、膠彩画の命名者である林之助と台湾美術展覧会・台湾総督府美術展覧会や帝国美術展覧会で活躍した陳進についての文献を中心に翻訳と整理を進めている。 中国における中国画・岩彩画と模写の関係については、本件に深く関連する研究課題であり、本件研究代表者が研究分担者となっている基盤研究B(海外学術調査)「中国における岩彩画の登場と戦後日本画のメチエ」の公開研究会での発表ならびに研究成果報告書に寄稿した論文によって、現段階で取りまとめた研究成果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5月、6月に実施した韓国・ソウルへの渡航では、予想以上の研究者と交流することができた。また、韓国については、本研究費によって招聘した研究者以外にも来日中の研究者と交流することができた。一方、年度途中で必要性が判明した韓国における水墨教育に関する調査が年度内に実施できずに次年度の課題となっている。 台湾については、膠彩画関係資料の収集と翻訳を進めたが、いまだ情報不足である。台湾・台中にある東海大学への調査渡航が必要となったが、年度内に実施できずに次年度の課題となった。 中国における中国画・岩彩画と模写との関係については、本研究への契機となった課題であり、本件の研究代表者が研究分担者となっている基盤研究B(海外学術調査)「中国における岩彩画の登場と戦後日本画のメチエ」の最終年度と重なったため、後者の費用での渡航が実施でき、本件での成果にもつながった。1980年代後半から2000年頃に日本画を学んだ留学生たちが帰国後に立ち上げた「岩彩画」という新ジャンルと敦煌やキジルの古代壁画模写との関係を指摘し、それが留学時期の日本画における敦煌壁画模写からの影響を受けたものであったという考察を研究会発表と論文の形でまとめた。さらに東京芸術大学との交流事業で来日した敦煌研究院の院長をはじめとする研究者と交流して、敦煌壁画模写についてのさらに詳細な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国における東洋画(韓国画)、台湾における膠彩画に関する資料収集と分析を進める。具体的には、現代東洋画ならびに現代膠彩画の確立に中心的な役割を果たした日治時代の留学生(韓国:朴レヒョン、千鏡子ら)(台湾:陳進、林玉山、郭雪湖、林之助ら)に関する資料である。まずは、前年度に不十分であった国内資料の収集を推進し、渡航調査での課題を明確にする。 上記の準備的研究を踏まえ、なるべく早期に韓国と台湾への渡航調査を実施する。現時点で計画している訪問先は、韓国・ソウルの中央大学美術大学と成均館大学美術大学、台湾・台中の東海大学美術系である。また、韓国の千鏡子に師事した李淑子元高麗大学教授、台湾の林之助に指示した李貞慧東海大学副教授との面会によって教示を受ける計画である。 また、日本国内の研究として、日本美術史の形成、指定文化財制度、印刷物などの複製、日本画における模写教育をキーワードに、それらの関係性を考察していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に計画していた海外渡航調査が一部実施できなかったために、次年度への繰越金が生じている。繰越金は当初の予定通り、台湾への渡航調査ならびに通訳謝金、資料購入費に充当することを計画している。
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