2013 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける国号絵画と模写―1945年以降の日本画、韓国画、中国画を対象に
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24652019
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
荒井 経 東京藝術大学, 美術研究科, 准教授 (60361739)
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Keywords | 日本画 / 東洋画 / 韓国画 / 中国画 / 膠彩画 / 岩彩画 |
Research Abstract |
東アジアの国号絵画である日本画、韓国画、中国画の成立を探るにあたって、韓国と台湾における1945年以前の状況に特化した調査研究をおこなった。 韓国と台湾における近代絵画の成立にきわめて重要な影響を与えた朝鮮美術展覧会と台湾美術展覧会の現存する図録のデータを基礎資料として入手し、本研究と関わりの深い東洋画部門を通覧して画風や入選者の変遷を辿り、各種の統計をとった。 朝鮮美術展覧会後期に東洋画部門で特選を受賞した日本人画家である安保道子に関する資料提供を受け、書簡の翻刻をおこなった上で出品作品と照合しながら、朝鮮在住日本画家の状況の一端を考察した。この資料ならびに考察については、東京藝術大学美術学部紀要第52号に投稿して査読を経ている。 渡航調査も韓国と台湾において実施した。韓国では、中央大学を訪問して東洋画における絹本仏画の模写教育や創作教育の実情を見学できた。また、弘益大学や誠信女子大学の教員らとも意見交換をおこなった。ソウル市立美術館では、朝鮮美術展覧会末期の東洋画部門で頭角を現し、光復後に韓国画を牽引した千鏡子の常設展示室を見学して、日本の女子美術学校留学時代から現代に至る作品を通覧した。 台湾では、台湾大学でおこなわれた国際シンポジウム「異地與家郷」に参加して植民地下における台湾美術研究の最新情報を傍聴するとともに、日台の研究者と意見交換をおこなった。また、台中では、国立台湾美術館において台湾美術展覧会に出品された主要作品を数多く実見することができた。林玉山、郭雪湖、林之助らの台湾人東洋画家の作品に加え、台湾で活動した日本画家である木下静涯や郷原古統の作品も実見することができている。さらに、東洋画から改名した膠彩画の教育において中核となっている東海大学を訪問し、膠彩画教育史を通覧する展覧会を見学するとともに、同大学の教員たちから体験に基づいた情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東アジア各国における1945年以降の国号絵画の成立を研究するにあたって、その前史となる植民地下の美術展覧会を中心にした調査をおこなって一定の成果をあげることができた。一方、植民地下の美術展覧会に関する研究は、各国の研究者が領域の拡張と深化を進めながら一つの研究領域を形成しつつあり、本研究における視点の明確化や範囲設定をおこなっていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる平成26年度には、韓国、台湾、中国での渡航調査などを踏まえた上で、特に1945年以前の日本画と1945年以後の日本画の差異について取りまとめていく方針である。 年度前半には、補完的な渡航調査を実施する。年度後半には模写や古典をキーワードとして日本画をはじめとする国号絵画の成立に関する考察をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外調査渡航が当初の計画よりも、回数、日数ともに減じたため。それに伴って、通訳者や翻訳者への謝金なども減じた。 次年度の前半に遂行できていない海外調査渡航を実施していく。
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