2013 Fiscal Year Research-status Report
英国RA会員ジェイムズ・バリーの研究―十八世紀愛蘭出身カトリック画家の精神と芸術
Project/Area Number |
24652033
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
桑島 秀樹 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (30379896)
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Keywords | ジェイムズ・バリー / エドマンド・バーク / 崇高美学 / アイルランド / 18世紀 / カトリック / ダブリン / コーク |
Research Abstract |
研究第二年目H25年度は、第一年目に刊行したジェイムズ・バリー論考「パトロン政治家バークを描くジェイムズ・バリー ―忘れられた十八世紀アイルランド人画家の葛藤―」(『人間科学研究(広島大学大学院総合科学研究科紀要I)』第7巻, H24年12月, pp. 1-24)をもとに、(日本)美学会、日本イギリス哲学会、日本18世紀学会、日本アイルランド協会等に所属する関連分野の専門家たちにひろく配布・公開し、その批判を仰ぐことに注力した。 さらにH25年度成果としては、バリーのパトロンであり、上記論考でも言及したエドマンド・バークの記述(友人リチャード・シャクルトンへとの往復書簡)を通じて、18世紀当時のアイルランドの精神風土を探ることも論考として成果を得た。「E・バークのカレッジ在学期における〈ダブリンの憂欝〉あるいは〈バリトア幻想〉と文芸趣味の実践的醸成 ―キルデアの親友クエーカーR・シャクルトン宛書簡から―」(日本アイルランド協会編『エール(アイルランド研究)』第33号, H26年3月, pp. 196-214)である。本稿により、バリーとバークの故地である南部都市コークと、首都ダブリン(ならびに、18世紀アイルランドのクエーカー教徒の故地キルデア州バリトア)の文化風土との対照性が明らかにされた。 バリーによる絵画実践とバークによる理論の結節点として、H24年度の上記論考でも言及した「ケルト的崇高」(あるいは「アイルランド的想像力」)という概念にかんしては、「アイルランド映画」の分析をおこなった別の論考、「映画『フィオナの海』にみる〈海〉と〈妖精〉の語り口 ―異界交流、あるいはアイルランド美学の伝統―」(文芸学研究会編『文芸学研究』第17号, H25年3月, pp. 1-35)を上梓。これにかんしてもH25年度中に、上記関連学会の専門家たちの意見を仰いだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H25年度は、当初予定していたアイルランド現地調査・情報交換をおこなうことができなかった。それは、拠所なき私的事情(妻の第二子妊娠・出産と育児補助必要性の出来)による。
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Strategy for Future Research Activity |
基金化制度の利点を活かし、H26年度に繰り越したH25執行予定分予算(現地調査と国際学会参加・発表など)、H25年12月頃までに、当初予定の調査計画を可能な限り実施するべく善処したい。 現在のところ、H26年7月上旬開催予定の韓国・テグ(嶺南大学)での東方美学会での研究課題をめぐる口頭発表、8月中旬~下旬もしくは9月上旬でのアイルランドおよびイギリスなどでの現地調査・研究情報交換の実施を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度初めに妻の第二子妊娠が発覚し、H25年度内は、大学学務を除く日常生活における多くの時間を、妻の介助・新生児の育児に費やす必要が生じたため(第二子は、H25年12月誕生)。こうした事態は、本研究課題申請時点では予測困難なだった。 H26年度経費へと繰り越した残額は、そのほとんどが、アイルランド・イギリスを中心とする長期の海外での現地調査や研究情報交換、ならびに、国際学会への参加などの経費として計上したものだった。よって、家族介助の軽減が見込まれる、H26年度の夏季から秋季以降に、精力的に繰越し残高を、上記の当初目的の遂行のために充当したい。 なお、現時点で、7月初旬の韓国の嶺南大学(テグ)での東方美学会への参加・研究発表、8月末もしくは9月初旬~中旬におけるアイルランド・イギリス現地調査の遂行を計画中である。
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