2013 Fiscal Year Research-status Report
国際博覧会における展示映像の記録・保存に関する研究
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24652037
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
脇山 真治 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (00315152)
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Keywords | 展示映像 / アーカイブ / 国際博覧会 |
Research Abstract |
平成25年度の活動予定は、①1970年日本万国博覧会の提示映像の保存状況調査、②調査報告としての学会発表、③海外の展示映像保存調査であった。①について最も大きな進展があり、日本万博日本政府館の展示映像のフィルム原版を発見したことである。以下は2013年6月13日付の記者発表概要である。 <概要>「1970年開催の日本万国博覧会の日本館で上映され、その後所在不明だった8面マルチ映像作品『日本と日本人』のフィルム原版を、先月東京都内にて発見しました。この作品は市川崑監督によるもので、富士山の四季とその山麓に生きる無名の人たちをとおして、日本と日本人のすがたと精神をとらえ、将来を見据えて描かれたものです。 博覧会等で上映される展示映像は、劇場映画とは異なり会期終了後に保存する習慣も組織もありません。さらに撮影と上映のシステムも世界標準がないためほとんどが廃棄されています。そのため貴重な映像原版も同時代の最新技術も、当時にさかのぼって調査することはたいへん困難を要します。このような「展示映像アーカイブ」は世界でも例がないため、このフィルム原版発見を、アーカイブを実現する契機にしたいと考えます。」 ②は上記の内容ならびになぜ展示映像は保存されていないのか、国立フィルムセンターの活動実態等のレポートを含めて日本展示学会にて発表した。③はフランスのポワティエにある映像テーマパーク「フチュロスコープ」を取材した。ここは常設博覧会ともいうべきテーマパークであるが、アトラクションのすべてが展示映像であり、パビリオンごと保存・公開するという形式をとっており建築、展示、運営など総合的に保存している稀有な例である。わが国も一部でこの方法が実施されているが展示映像の保存について先進的な事例である。以上の①~③が平成25年度の研究活動の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の活動目標は、①1970年日本万国博覧会の展示のうち、日本政府館、電力館、サントリー館の展示映像の保存状況を明らかにすることであった。実績概要で記したように、日本政府館の映像(フィルム原版)の発見は映像史としても展示デザイン史としても貴重なものであり、新聞各紙にて評価された。電力館、サントリー館ともにフィルム原版の発見ならびに保存状況をあきらかにするまでには至らなかったが、すでに平成26年度計画の調査場所までは確定することができている。その意味ではほぼ順調な進展状況である。 また②学会発表についても、展示映像の安全管理上の問題もあって仔細に踏み込んだ報告は控えたものの、日本展示学会発表ののちに映像学会との共同推進の打診をうけるなど、副次的な影響があり研究の今後の展開が期待できる。 ③の海外調査対象のフランス「フチュロスコープ」は、日本ではあまり知られていないが、展示映像保存のひとつの先進事例として参考になると思われる。展示のための建築や上映空間もまるごと「常設館」として公開し続けているものである。維持管理の煩雑さや研究者への情報提供が不十分であるなど課題もあるが、展示映像アーカイブについて重要なヒントを提供している。 これらの活動をとおして、平成25年度の研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は必ずしもすべての目標を達成したわけではない。ことに1970年日本万国博覧会の電力館、サントリー館の展示映像については保存状況を明らかにしていないため、継続的に調査を行う予定である。サントリー館は日本映画記録保存センターと情報交換を行うことを確約している。また電力館は関西電力ならびに電気事業連合会へはすでに調査願いを提出しており、26年度前半には保存状況の概要を明らかにする予定である。この電力館の状況は日本展示学会にて発表すべく準備をしている。 すでにフィルム原版を発見した日本政府館は、その作品『日本と日本人』の再現に向けた計画を立案する予定。コンテンツが特殊仕様のフィルムのため、当時のままの再現は不可能だが、デジタル化と擬似的な再現をいかに実現できるか検討を進める計画である。故市川崑監督、作曲担当の故山本直純氏のそれぞれご遺族とも打ち合わせを終えており、学術研究成果としての「再現上映」に協力をしていただくことになっている。 また本研究は、科研の萌芽研究として認めていただいたものだが、国際博覧会等で制作・上映された展示映像は、ほとんどが記録や保存の対象となっておらず、散逸と廃棄が続いている。映画が国際的にもアーカイブされている環境とは大きく異なる。このままでは貴重な映像遺産が学術研究の対象としても失せてしまうという危機的な状況のため、平成26年度はこれまでの総括と同時に平成27年以降の継続的な研究のために、科研費の新たな申請を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の通信費や機材の運送費がかからなかったため、4万4千円ほどの繰り越しとなった。 平成25年度の機器レンタル費、機材運送費等で適切に執行する予定である。
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Research Products
(3 results)