2012 Fiscal Year Research-status Report
古代東アジア音楽の検証可能な「再生」へ向けて ─解読から鳴り響く音楽への過程─
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24652041
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 復元 / 秘曲 / 鴨長明 / 秘曲尽くし / 三曲 / 流泉 / 啄木 |
Research Abstract |
24年度は雅楽器の独奏曲を中心に、古楽譜の解読の結果を舞台で鳴り響く音楽として再現し、さらにCDによる音源記録を用意し、その解説を執筆した。 二松学舎大学の磯水絵教授の依頼を受けて、12月15日に同大学九段校舎で開催された『方丈記』成立800年記念シンポジウム&コンサート『今日は一日、方丈記』の第3部、「「秘曲尽くし」再現─『文机談』に見える秘曲を聴く─」(入場無料)の音楽を担当した。「秘曲尽くし」事件は、鴨長明が世捨て人となったきっかけの一つだったともいわれるが、今回はその際に演奏された器楽曲を中心に、他の琵琶秘曲を加え、全部で9曲の復元試演を行った。プログラムは次の通り。律の部:篳篥《小調子》、笙《平調入調》、琵琶《大常博士楊真操》、箏《千金調子》。呂の部:琵琶《石上流泉》・《上原石上流泉》、箏《由加見調子》、琵琶《啄木調》、笛・篳篥・笙《荒序》。 復元試演へ向けての作業は、本研究の研究計画に従って、研究代表者が用意した古楽譜の解読結果を、事前の打合せの場で4名の楽器奏者(篳篥の田渕勝彦氏、竜笛の谷内信一氏、琵琶の中村かほる氏、笙の中村華子氏)に提示し、研究代表者の知識・知見と奏者の経験値とを照らし合わせながら演奏内容を決めた。コンサート当日は研究代表者の解説と、研究代表者(箏)を含めて5名による復元試演を行い、映像記録も採った。 後日、演奏内容について改めて打合せを行い、同会場で録音を行った。相談の結果、《荒序》に太鼓を加えることになったので、宮丸直子氏が演奏に加わった。音源編集・マスタリング作業およびCDプレス原盤の作成を依頼し、CD製造に備えた。また、一般読者のための解説(選曲と曲順について、解読と「再現」の方法について、各曲の曲目解説)を用意した。CDと解説は、催し全体を記録する図書の一部として、25年秋に新典社より出版される予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
古楽譜の解読の結果を鳴り響く音楽として「再現」し、それを解説付き聴覚資料として記録するという研究目的は達成され、出版を待つのみとなった。すなわち、当初の計画で2年間に亘って実施しようと考えたプロセスを、縮小した形ではあるが、1年間で実施することができた。 24年度の部分的な規模縮小は、大学とのスケジュール調整ができなかったことが主な原因である。復元試演の場として計画した『法政大学「地域の方々との」伝統芸能を鑑賞する集い』は、大学側の都合で本研究計画採択以前という早い段階で日程が決まり、依頼したいと考えた演奏団体の都合が合わなかった。他の選択肢を考えていた時、二松学舎大学の磯水絵教授の依頼を受ける形で、上記の催しの音楽を担当することになり、雅楽器の独奏曲を中心に、9曲について解読から再現までの過程を記録することとなった。 当初は、より規模の大きい合奏曲や声楽入りの曲の復元試演も目論んでいたが、24年度に復元試演できた合奏曲は1曲のみとなった。これについては下記の通り、平成25年度において解読から再現への全プロセスを改めて実施しようと計画している。その結果、当初の計画よりも多くの聴覚資料を記録として残すことになり、より充実した成果物の制作が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
応募内容ファイルの研究計画・方法に記した通りのプロセスを、唐代伝来の音楽の合奏曲を中心に改めて行う。 復元試演の場となるレクチャー・コンサートについては、大学側がその日程をすでに決定しているため時期的な制約から演奏者とのスケジュール調整が困難な『法政大学「地域の方々との」伝統芸能を鑑賞する集い』は止めることとし、代わりに研究代表者が長年研究員を務めてきた上野学園大学日本音楽史研究所が主催する音楽史研究国際シンポジウム「唐代音楽の研究と再現」の一環として行うこととする。平成26年3月6・7日の2日間に亘って、記念講演4件・史料展観・研究発表6件が計画されている。7日の午後4時から研究代表者の解説と伶楽舎メンバーの演奏によるレクチャー・コンサートを行う予定である。 レクチャー・コンサートに向けて、9月までに演奏者との打合せに用いる楽譜を用意し、続けて各演奏者との打合せを進める。今回は唐代伝来の演奏伝承が途絶えてしまった楽器─排簫、尺八、五絃、阮咸、箜篌、方響など─が多く登場するので、奏法や調弦(もしくは調律)などについて可能性を探るため、演奏者との打合せを重ねる必要が生じる。 国際シンポジウムには、24年度に招聘が叶わなかった外国人研究者2名を招聘し、趙維平氏には記念講演を、呉国偉氏には研究発表をしてもらう。レクチャー・コンサート後の打合せと録音のスケジュールは現時点では未定であるが、24年度の実施と同様に、レクチャー・コンサートと同じ会場での録音が可能であればそれを実施し、音源の編集・マスタリングおよびCDプレス原盤の作成を行い、CDブック用のCD製造に備えておきたい。 なお、本研究の内容について、研究代表者は本年10月に中国・西安で開かれる国際会議での発表を依頼されており、交通費・滞在費は中国側が受け持つ予定となっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な費用は次の通り。 1.研究者招聘交通費・宿泊費として15万円(旅費)。 2.演奏者への専門的知識の提供および録音用リハーサル・演奏に対して75万円(謝金)。 3.録音、音源の編集・マスタリングおよびCDプレス原盤の作成に対して25万円(謝金・その他)。
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