2013 Fiscal Year Research-status Report
19世紀末~20世紀初頭の東欧ユダヤ文化圏における表象文化の研究
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24652042
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
樋上 千寿 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (30608740)
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Keywords | 芸術文化 / 東欧ユダヤ / イディッシュ / クレズマー音楽 |
Research Abstract |
研究協力者として新たに三代真理子氏(東京芸術大学大学院)と松本操子氏(アコーディオン奏者)を迎え、東欧ユダヤ文化圏の表象文化に関する情報交換と共通理解の基盤形成を目的に、共同研究会「東欧ユダヤ文化研究会」を2013年4月から2014年2月まで計6回開催した。 6月15日には研究成果を社会一般に発表する場として、京都市国際交流会館イベントホールにて「東欧ユダヤ音楽・クレズマー演奏会~シャガールが愛した、故郷の旋律~」を開催し、シャガール芸術の源泉となったイディッシュ文化と、イディッシュの音楽との関連性についてレクチャーと演奏を行った。 8月前半にはドイツ・ワイマールで開催されるイディッシュ文化に関する国際的なワークショップYiddish Summer Weimarに参加し、特にアラン・バーン博士(演奏家、音楽学)が中心となって行われるイディッシュの音楽の伝統に関するセミナー、およびイディッシュの器楽(クレズマー音楽)に関するワークショップに参加した(8月4日~12日)。その後ベルリンで開催されたユダヤ文化週間を取材し、情報交換を行った(8月14~17日)。またこの海外調査で得られた先端的な研究成果を盛り込んだ成果発表の会を11月16日に東京・両国の劇場「シアターカイ」にて行った。20世紀初頭の録音資料で伝えられてきた歴史的な楽曲と、現代演奏家によって伝統を基礎に作られた楽曲を、解説を交えて演奏した。演奏後の質疑ではイディッシュ音楽の「伝統」の本質について、参加者と活発な意見交換を行った。 ユダヤ芸術に関する欧文文献で国内に所蔵の無いものを購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、計6回の共同研究会を開催し、レクチャー・コンサートを6月に京都で、11月に東京で開催し、参加者との意見交換、情報の共有も十分に行うことができた。また10月には西欧ユダヤ人の音楽を研究・演奏する横山真姫氏のグループと共演し、東欧ユダヤ文化との差異を、音楽を通して認識する場を設けることが出来たことは非常に実り多かった。さらに、海外調査では、イディッシュ音楽の「伝統」について、深い議論に触れ、最新の先端的研究成果に接することができた。この成果は11月の東京でのレクチャー・コンサートで発表し、一般参加者とも共有できた。 平成26年1月末には、静岡市美術館で開催されたシャガール展に関連して、イディッシュ音楽とシャガールに関するレクチャー・コンサートに出演し、一般市民に本研究成果の一端を普及することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの2カ年で、イディッシュ文化の精神性と、音楽・美術への影響関係について、研究協力者およびレクチャー・コンサート参加者と理解を共有することができた。今後はこれまでの成果を踏まえ、さらに発展的な成果共有を目指すため、共同研究会「東欧ユダヤ文化研究会」を継続開催する(隔月1回程度)。シュテートル文化および東欧ユダヤ芸術に関する欧文文献の収集と読み込みを進め、随時共同研究会で有益情報の共有を行う。研究協力者は平成25年度に同じ。当該年度もテーマを発展させて開催されるYiddish Summer Weimar(ドイツ、ワイマール、7月末~約3週間)に参加し、イディッシュ文化に関する最新の研究成果の収集と情報交換を行う。また研究会と海外調査の成果を発表するため、レクチャー・コンサートを6月8日に京都市内で、11月13日に東京都内で開催する。当該研究の最終年度として、年度末に研究成果の総括を行い、文書と音源資料にまとめる。成果はデータの形式でまとめ、ウェブ上にて公開する。
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