2013 Fiscal Year Research-status Report
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24652043
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
由比 邦子 桃山学院大学, 国際教養学部, 非常勤講師 (50528586)
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Keywords | インターロッキング / ゴング・チャイム / オーストロネシア語族 |
Research Abstract |
本研究「演奏様式に基づく東南アジア音楽文化圏の再画定」は、東南アジアの音楽文化圏を規定するゴング・チャイムという楽器ではなく、特にオーストロネシア語族の分布域において歴史を通じて広く用いられてきたインターロッキングという楽器演奏法、すなわち、ゴング・チャイムも含めて複数人で音高を分担して旋律を組み立てるという行為に着目して、東南アジア音楽文化圏を再画定しようという試みである。 本研究は従来の音楽学・音楽史研究では注目されなかった分野に関わるものであり、あらかじめ参照できる資料がほとんどないために、主として現地調査の手段をとる。 平成25年度は、平成24年度に始めた台湾邵族の杵音の調査を続行すると同時に、ブルネイ・ダルサラーム(以下、ブルネイと略す)のゴング・チャイム音楽とその楽器についての調査に着手した。邵族の調査は平成25年度で終了する予定であったが、杵音が本来の儀式として行われる旧暦8月の邵族新年祭に実際に参加し、杵音の演奏を体験することができた。 ブルネイは音楽情報がきわめて少ないため、現地で一から情報を探す必要があった。そこで、まず現地の知人の助けを借りてクダヤン族のグリンタンガンgulintanganに接することができた。グリンタンガンはゴング・チャイムを中心とするアンサンブルで、フィリピンやボルネオ島に広範に分布する。しかし、クダヤン族はゴング・チャイムの代わりに木琴を用いる。インターロッキング奏法におけるゴングと木(や竹)の楽器の互換性について、新たに考察を行なう必要性を感じた。また、文化・若者・スポーツ省に所属する音楽家たちの協力を得て、ゴング・チャイムを用いるブルネイ族のグリンタンガンの構成楽器を調査し、演奏の録画を行なうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「平成25年度の研究実施計画」に記載したとおり、ブルネイの音楽調査を重点的に行なうことができた。現地の知人や文化・若者・スポーツ省の音楽家たちの協力なくしては調査は不可能であった。ただ、ブルネイでの調査に時間を費やしてしまい、ボルネオ島の他地域(マレーシアのサバ・サラワク両州やインドネシアのカリマンタン州)の調査に手を回すことはできなかった。 しかし、ブルネイに比べてマレーシアやインドネシアの音楽情報は比較的豊富であるため、情報量が圧倒的に少ないブルネイでの調査に集中したのは妥当であると考える。そしてその結果、今まで海外に紹介されることがなかったブルネイのグリンタンガンに接して、金属製のゴングとその代替として機能する木や竹の楽器の互換性と、インターロッキング奏法に関するさらなる問題点を見出すことができたのが平成25年度の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
「平成26年度の研究実施計画」に記載したとおりの現地調査を行なう。 平成26年度はインドネシアのジャワ、バリを主たる調査地とする。インドネシアのインターロッキング奏法を行なう音楽としては、ジャワのアンクルンangklungやコテアン・ルスンkotekan lesung、バリのブンブン・ゴビョグbungbung gobyogが挙げられる。アンクルンは竹筒を組み合わせた楽器、コテアン・ルスンとブンブン・ゴビョグは臼を杵で搗く楽器である。コテアン・ルスンとブンブン・ゴビョグは限られた地域で行われている音楽であるため、調査に時間を過度に費やすことはないと考える。 しかし、アンクルンは今やインドネシアの国民的楽器といわれるものの、楽器の歴史はまったく解明されていない。アンクルンはインターロッキング奏法を行なう代表的な楽器であり、本研究を始めるきっかけの一つとなった楽器でもある。フィールド・リサーチだけではなく、文献探究も丁寧に行ないたい。 また、平成25年度に知見を得たブルネイの音楽についてさらなる追跡調査を行なう可能性もある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「平成26年度の研究実施計画」を遂行するため、インドネシアでの音楽調査を行なう。特にジャワとバリを中心に調査するが、ブルネイでの追跡調査も行なう可能性がある。 基本的に、インドネシアでの現地調査のための交通費、滞在費、その他諸経費に使用する。加えてブルネイでの追跡調査を行なう場合は、それに関わる交通費、滞在費、その他諸経費にも使用する。また、本研究に関わる日本国内での学会や研究会参加のための交通費、滞在費にも適用する。
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