2012 Fiscal Year Research-status Report
近代趣味家の蒐集資料を文化資源として古典研究に応用するための包括的な基礎研究
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24652049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
牧野 和夫 実践女子大学, 文学部, 教授 (70123081)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 趣味家 / 集古会 / 岸田劉生 / 水木要太郎 / 水落露石 |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究の成果を記すならば、家蔵の合計40数冊の林若樹の日記・備忘録(一部集古会々員岡田村雄の備忘録を含む)1点のうち、整理を終えた大正三年分の日記を翻刻紹介した。この日記には多くの新知見が含まれ、その活用は今後の補充調査などを俟って展開可能なものが少なくない。具体的内容として例えば、西国立志編の彫師名や島田蕃根の逸話などである。紙資料類(貼り交ぜ帖など)の整理も進めたが、その意義・重要性については、新しい事実関係などに及ぶものであり、一端は既に口頭発表で示した。日出新聞記者と文藝倶楽部編集部とを緊密に結び進展した「内国勧業博覧会と旅行」の特集などについて、趣味家竹清宛絵葉書類や水落露石作成貼り交ぜ帖などで検証した。 諸機関・諸文庫の所蔵する関連資料の調査は、随時、研究代表者個人で行った。奈良県下の図書館・資料館などで、水木要太郎とその周辺資料を収集したが、研究協力者との共同調査は計画段階に止まった。伊勢神宮文庫へ蔵書を献納した初期集古会々員江藤正澄らの蒐集・展観・閲覧資料の追跡調査は、九州方面の研究協力者との連絡・打ち合わせを行ったが、着手には及ばなかった。 明治・大正期に流行した「趣味」の問題が、「流行」をテコにした大量消費時代の到来と連動しつつ、明治大正期のアール・ヌーヴォーやモダニズムなどの概念とも無縁ではなかったことは、既に指摘されているが、資料的な関連で若干の資料を収集しえた。竹清家訪問者の芳名帳に屡々記帳した岸田劉生が係わった大阪の美術商をめぐる絵葉書資料などは既収のものであるが、今年度の調査で同じ美術商宛の小出楢重などの絵葉書類が紹介されており、今後の課題となるものでもある。 また、趣味家グループに属して着物デザインに係わった日本画家の資料にも若干及ぶものが蒐集できた。すべて今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発表や翻刻紹介については、ほぼ順調に進展しているが、研究協力者との共同調査は計画段階に止まっており、やや出遅れている、といえる。研究協力者との日程を調整し調査予定の先方との交渉で日程調整がつかず、今年度は二件の調査を延期している。 早めの段階での調整を期したい。 また、研究協力者との打ち合わせは、順調であったが、着手に到らなかった点は次年度の課題として繰り越されたが、ほぼ協力体制も確立し、順次進展が期待できる。 なにぶん、新しい分野であり、積極的な協力者の稀な領域であるが、今年度の積極的な協力体制の構築もほぼ完成し、次年度以降に十分な成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
林若樹の日記・備忘録(一部集古会々員岡田村雄の備忘録を含む)1点の、整理を継続する。引き続き家蔵の林若樹関連資料50点・三村竹清関連資料60点を整理・調査し、解題を作成する。従来見過ごされてきた、紙資料類(貼り交ぜ帖多し)の整理・著録を行い、諸機関・諸文庫の所蔵する関連資料の調査に着手し、趣味家相互の関係を解明する。趣味家の研究蒐集活動をより立体的に捉え、新たな側面から再検討を加えることを可能ならしめるとともに、そこに集められた古い紙媒体の資料・古典籍の伝来背景を探求する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の継続として伊勢神宮文庫へ蔵書を献納した初期集古会々員江藤正澄らの蒐集・展観・閲覧資料の追跡調査を、研究協力者と共同で神宮文庫・九州大学附属図書館などにて行う。調査は必要に応じて随時、メンバーの日程を調整し、2~3人、1~4泊程度の規模で行う。25年も引き続き趣味家旧蔵の紙媒体の資料類の蒐集・調査を一度に2~3人、1~4泊程度の規模で行う。 新たな調査対象である大阪府・中之島図書館蔵(人魚洞文庫)への資料収集出張、山内金三郎関連資料を所蔵する美術館などとの連携の構築などの検討を行う。
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