2013 Fiscal Year Research-status Report
近代趣味家の蒐集資料を文化資源として古典研究に応用するための包括的な基礎研究
Project/Area Number |
24652049
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
牧野 和夫 実践女子大学, 文学部, 教授 (70123081)
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Keywords | 絵葉書 / 創作版画 / 林若樹日記 / 山内神斧 |
Research Abstract |
本研究は、近代における趣味家の活動が、多方面な領域に与えた影響を包括的に量ろうとする研究であるが、一方で近代をさかのぼり、特に専門とする中世文化(文学)との連続性の検証を視野に入れた研究でもある。研究課題に即した領域に関して、新たに家蔵となった初期集古会会員澤塵外手製貼り込み帖や集古会会員広瀬辰五郎宛紙もの類の貼り込み帖について整理、分析を加えて紹介並びに口頭発表を行った。その二点の旧蔵者についての情報収集に着手した。 併せて新たな諸機関・諸文庫の所蔵する関連資料の調査に着手、25年度は具体的には福島県立近代美術館蔵の山内神斧資料の閲覧を許され、整理研究を担当する研究者から現状について報告を得た上で、数名の研究者を交えた資料調査・情報交換を行った。神斧と関西の集古会会員との極めて親密な交流が明瞭になった。しかし、勤務先の校舎移転に伴う諸事情により、年度後半の調査活動は極めて限定的なものとなった。 身辺の作業に殆どを費やさざるをえず、家蔵する資料、高楠順次郎収集の古版経などの写真貼り込み帖(三村竹清作成)や山内神斧製作古版・古写本断簡貼り込み帖の整理を行ったのみであった。近く紹介を予定している。また、継続中の林若樹の日記・大正3年分後半の翻刻紹介を行った。早稲田大学演劇博物館所蔵の展観「新耽奇会」を閲覧、新たに家蔵となった三村竹清関連資料類との連関(観無極会資料)を考えてみる機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は、資料収集面で予想外に進展した。従来、手薄であった初期集古会会員の貼り込み帖を収集、絵葉書類においても竹清関連で集中的に資料を収集し得た。 それらの紹介・展観・発表を研究会・学会などで行ったが、研究の公刊において十分とはいえない点があり、今後に課題を残した。年度後半は、校務(大学校舎移転)などにより予定していた諸方の調査が無理となったが、予定外の調査が可能となり、多くの収穫を得た。調査・研究の進捗状況を総合的に見た場合、比較的順調な年度であった、と認めるべきであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本課題にむけての取り組みは、関連資料収集・資料整理検討・口頭発表・論文発表、日記・原稿・メモ類の資料紹介を中心に行う。具体的には、林若樹日記の更なる翻刻紹介、集古会会員の資料について日用紙もの類の貼り込み帖を軸にして整理比較し、 分析する。その一例を挙げるならば、既に所蔵する若樹側の資料と新たに家蔵となった三村竹清関連資料類との関連を観無極会資料に絞って分析比較し公刊する。 また集古会会員などの介在によって連関し展開する他の領域との相互交流・交渉について、積極的に資料収集に着手する。たとえば、25年度の調査などにおいて浮上した人々を中心に、予備調査を含め諸方へ赴き、交流の相の具体的な見通しをつける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
近畿地方を軸にして3日間・3人・4回ほど予定していた25年度における調査旅行が、年度後半の大学校舎移転に伴う予想外の校務が生じ、実行不可能になった点が主な理由である。これらの計画は26年度にまわさざるを得ない事態となった。 東北地方の福島や秋田、近畿地方の大阪・和歌山などの博物館・美術館・図書館への訪書旅行や実地踏査分として、26年度旅費予定額に25年度の残額を加えて計上する。さらに一部を関連資料のPDF化に着手するが、その際の協力者への謝金として計上する。
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