2012 Fiscal Year Research-status Report
多変量解析による中国古典籍の分析に基づく日本古典への影響についての基礎的研究
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24652054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
松田 信彦 鹿児島工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40450150)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 上代文学 / 中国古典 / 日本書紀 / 多変量解析 / クラスター分析 |
Research Abstract |
本研究は、日本古典の最古の部分を担う『日本書紀』『古事記』あるいは『風土記』といった文献の文章的な成立に、大きな影響を与えている中国古典の文章を、多変量解析を用いて分析を行い、その基本的な文章の性格の相違を明らかにすることを第1の目的とする。その上で、その文章がどのような形で、日本古典の文章に対し影響を与えたのかを比較検討することで、これまで、いわゆる出典論でしか、我が国古典への漢籍の影響を考察できなかった部分に、新しい手法を用いることが可能であることを検討していく。 まず、漢籍の調査及び分析を行う前に、調査対象となる文献の絞り込みを行った。まずは、日本上代の特に『日本書記』のような史書に、強く影響力を持ったと考えられ、かつ従来からの出典論などで指摘のある『漢書』『後漢書』『史記』『三国志』の4点にしぼり、その漢文としての文章の性格を比較していくことにした。 さらに分析の元となるデータの整備を行った。クラスター分析に用いるパラメータは、漢籍本文の中から、特定の文字の使用数を抽出する必要があるが、そのためには、まず信頼できる元データが必要となる。初年度は、中華書局の標点本を底本とした検索システムの購入を基盤に、それらの作品の文字検索ができる環境を整備した。また合わせて、WEB上の検索システムと合わせることで、より正確な調査が行えるようにした。 この作業をとおし、次年度以降に実際にクラスター分析を行う準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究の初年度としては、概ね計画通りに進んでいる。当初の計画にも記したように、初年度は、2年度に行う本格的なクラスタ分析の準備として、調査の環境整備が主たる目的で、その点についてはおおむね整備されたと考える。 検索に必要なハードウエア・ソフトウエアの両面も、効率的な研究費の執行により、整備され、次年度の本格的な調査の準備は整った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に整備されたデータを元に、漢籍(例えば『漢書』『後漢書』『史記』『三国志』など)から分析にかけるために、本研究の成果をもっとも効果的に示してくれるであろう、助字などのパラメータの選択・抽出を行う。その後、抽出したパラメータを、クラスター分析にかけ、各巻を区分する。その結果、古典籍ごとの用字・表記の特徴を分析し、また同時に、同じ典籍の中でも、各巻によって筆録者によるものと認められる区分が可能かを検討する。その際、必要があれば、各分野の研究者・専門家に意見を求め、調査・研究の参考としていきたい。 さらに、3年目には筆録・編纂という立場から見た漢籍の区分を行い、『漢書』『後漢書』あるいは『史記』などの、日本に史書編纂に強い影響を与えたと考えられる文献の分析をとおし、『日本書紀』をはじめ、『古事記』・『風土記』などの日本の上代文献との比較を行い、漢籍の影響をこれまでの出典論とは異なる見地から分析していくと同時に、日本古典文学研究の、特に分析方法として、この多変量解析(クラスター分析)が有効かどうかも検討し、合わせて、その他の新たな分析法の可能性を検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、関連する学会への参加、調査研究のための旅費に、25万円程度の支出を予定している。 また、漢籍関係、日本上代文学関係の資料の購入、またクラスター分析に必要な資料やソフトウエアの購入等の物品購入に25万円程度の支出を見込んでいる。
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