2012 Fiscal Year Research-status Report
アメリカの大衆音楽と文学の創作におけるソーシャルメディアの役割
Project/Area Number |
24652065
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
石崎 一樹 奈良大学, 教養部, 准教授 (70330751)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
本研究の研究計画調書に基づき、平成24年度は主に以下の活動を行った。 まずは、12月5日から13日の行程で、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴならびにインディアナ州ブルーミントンでインタビュー調査ならびに企業視察を行った。シカゴではUSインディーズバンドAnathalloの元メンバーで、現在企業向けの音楽作成会社を運営するMatt Joynt氏に対し、12月8日にインタビューを行った。また9日から11日にかけては同Anathalloの元メンバーで、現在はインディアナ大学ブルーミントン校の職員であるSeth Walkerへのインタビュー取材と、同ブルーミントンに拠点を置く音楽レーベルであるJagjaguwar(Secretly Canadian)を視察のため訪れた。これらの取材には日本のインディーレーベルであるムーアワークス代表の斉藤悠哉氏の協力を得た。 次に、本研究の理論的枠組を構築するための論文執筆の準備、ならびに関連書籍の翻訳を行った。そもそも、1980年代に萌芽した、現在USインディー音楽として成立している音楽は、音楽作成や人間関係の構築、そして作品のプロモーションなどの点で、商業音楽業界の対概念として捉えられる側面がある。大衆音楽における文学性の追求が最終的な目的であるが、本年度については特に、アメリカの音楽業界の全体像をインディーズ対商業音楽の構図で捉える試みを、論文執筆の準備において、またエリック・デイヴィス著『レッド・ツェッペリン IV』(平成24年12月刊行)とスティーヴ・マッテオ著『レット・イット・ビー』(25年5月刊行)の翻訳において行った。 最後に、将来的に日本におけるインディーズ音楽と文学のあり方を研究することを想定していることから、日本のインディー音楽配信会社であるバウンディー、スペースシャワーTVの視察ならびにインタビュー調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではインタビューや視察などのフィールドワークを活動の主目的としている。平成24年度は北米の2都市、3カ所で合計7名のインタビュー対象者に話を聞き、付随する調査を実施した。リスナーの教養、あるいは知的好奇心を高めるような要素をもつ大衆音楽が散見されるなか、そうした音楽を、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアも活用しながら作る実作者や、そのような作品を配信する企業の考えなどについての生の声を聞くことは極めて重要であり、平成24年度の段階で想定された項目については完遂したといって良い。 今回アメリカで取材したAnathalloの元メンバーのふたり、Matt Joynt氏とSeth Walker氏については、両者ともにインディーズバンドとしての音楽キャリアを現在の職業に直結させていると見受けられる。商業音楽に見られがちな、「音楽は娯楽である」という姿勢とは一線を画し、インディーズ音楽を好感する実作者やリスナーは、「音楽は生き方である」という態度を往々にして示すが、例えば上述のJoynt氏とWalker氏の、音楽や文学を含む芸術の捉え方には、まさにそうした生き方の実践者としての知見があった。 ソーシャルメディアの活用については、例えば、視察を行ったインディー音楽レーベルであるJagjaguwarの4人の担当者にインタビューを行った際、特にインディー作品については、アーティスト本人によるソーシャルメディアの活用が、作品のプロモーションのためには重要な要素にもなる、という意見も窺い知ることができた。この点については本年度以降も継続的に調査を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(平成25年度)と来年度(26年度)の2年間では、昨年度同様ひき続きアメリカのインディー・ロック音楽のなかでも特に、文学テイストを前面に押し出すアーティスト本人や、インディー音楽業界関係者などに対するインタビュー調査や、企業・団体の視察を行う予定である。 これに加え、本年度は特に、文学のなかのロック音楽、という視点からも調査と考察を行うことを重点課題にしようと考えている。現時点では、音楽を自身の創作の重要な要素としているニューヨーク在住の作家に対してインタビュー調査を行い、周辺資料や情報の収集を、アメリカの各都市やその他の地域で行うことを予定している。 今年度以降、「音楽の中の文学」と「文学の中の音楽」という、異なるジャンルの相互貫入を受けての創作のあり方について、特にソーシャルメディアという現代のテクノロジーの存在を念頭におきつつ、さらに考察を深める形で、拡散する教養としての文学のあり方の現状を把握すべく、アメリカと日本でのインタビューを中心とした実地調査ならびに、論文や著書の執筆による理論構築作業を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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