2013 Fiscal Year Research-status Report
教会閉鎖と霊廟開設――ソビエト政権成立期における公共空間の再編過程に関する研究
Project/Area Number |
24652068
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宇佐見 森吉 北海道大学, 大学院メディアコミュニケーション研究院, 教授 (20203507)
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Keywords | ロシア / 教会 / 美術館 / 霊廟 / 文化宮殿 / レーニン / フローレンスキー / 視覚 |
Research Abstract |
本研究は、ソビエト政権成立期の教会、美術館、霊廟、文化宮殿が視覚化するイデーについて、①教会閉鎖 ②「生ける教会」③霊廟開設 ④文化宮殿構想の4つの観点から事例調査を行なうことを構想している。 二年目にあたる平成25年度も引き続きセルギエフ・ポサードを中心とする「共産主義下の教会閉鎖」に関する事例を蒐集したほか、1917年の共産主義政権樹立後の新政府による文化政策、レーニン死後の霊廟開設に関する資料等の蒐集および分析に取り組んだ。 ①の「教会閉鎖」については、前年度の調査でセルギエフ・ポサード修道院の聖遺骸開封の分析に取り組んだが、今年度は作家プリシュビンの残した映像記録など補足的な資料の分析を行なった。正教会側による教会の受難史の刊行は現在も続いており、引き続き教会関連の文献の蒐集は欠かせない。 ②については、ロシア革命後の新政府による文化政策、とりわけ文化財保護と共産主義理念宣伝の名のもとに推進されたミュージアム行政について資料の検討を行なった。教会財産没収、文化財保護、美術館開設という一連の過程で大きな役割を果たしたのは、当時画壇で活躍していたイーゴリ・グラバーリであったが、その活動の実態はこれまで十分に明らかになっているとは言い難く、今年度、グラバーリ関連の資料に触れることが出来たのは大きな収穫である。③レーニンの遺体保存については、モニカ・スピヴァクの研究を参照したほか、昨年度から引き続き、レーニン廟の建築家シシューセフの業績の検討を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ソビエト政権樹立期における教会閉鎖と聖遺骸開封にともなう反宗教宣伝の視覚化の過程、さらにはレーニン没後の霊廟建設から1930年代に構想されたソビエト文化宮殿造営計画へと展開するソビエト的公共空間の形成過程、とりわけ社会主義ユートピア理念の視覚化の過程について検討を行なうことである。 二年目にあたる平成25年度に計画していた資料蒐集は、新資料の刊行も重なり順調に推移している。ただし、革命後の文化政策関連資料、文化宮殿関連資料については、さらなる文献調査を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はこれまでに収集した文献資料の分析結果に基づき、社会主義的理想として夢想された文化空間の特質について考察を行なう。当初の構想では、考察の範囲を1930年代の文化宮殿造営計画までとしたが、資料調査の進展具合によっては、考察の範囲を霊廟開設までにとどめることも検討する。年度後半には調査結果をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の残額は3月末に使用したものであるため。 4月末に全額清算される。
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