2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24652078
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
池田 潤 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60288850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福盛 貴弘 大東文化大学, 外国語学部, 准教授 (00407644)
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Keywords | 文字類型 / 子音文字 / ヘブライ語 / ERP / N170 |
Research Abstract |
平成24年度に脳波実験システムの改善を行い、正確な潜時の値を求めることができるようになった。これにより潜時に着目した実験が本格的に行えるようになった。また、人文社会系研究倫理審査委員会の審査を受け、系の研究倫理指針を遵守しつつ研究を遂行する体制を整えた。 これらをふまえ、平成25年度は2種類の実験を実施した。ひとつは、池田ほか(2011)で立てた仮説を検証すべく、日本文字を対象として被験者を増やして追験を行った。 もうひとつは、平成24年度に実施したヘブライ文字を刺激とする予備実験の結果を分析、考察、発表するとともに、それをもとにパラダイムを改良して、本実験を行った。予備実験では、①母音記号を付した刺激は母音記号なしの刺激よりもN170の電圧が高い、②同一の文字列を1形態素の語として読む場合と2形態素の語として読む場合を比べると、前者よりも後者の方がN170の電圧が高いという次の結果を得ている。このうち①については、母音記号を付した刺激の方が形状的に複雑で、より多くの情報を処理する必要があるためだと考えられる。他方、刺激1と刺激4は同一の文字列で、唯一の違いは形態素の数である。したがって、施行Iと施行IVの電圧差 (上記②) は形態素数を反映すると考えるのが自然であろう。これは、子音文字が語根や接辞等の形態論的単位を書き記す文字であるという仮説を支持する結果だと言える。本実験では、ヘブライ語母語話者4名を対象として予備実験の結果を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、研究分担者が入院し、代表者が単独で研究を進めるしかなかった。また、機材の問題も発生し、当初の計画よりもやや遅れていたが、脳波実験システムの改善を行い、正確な潜時の値を求めることができるようになった。これにより潜時に着目した実験が本格的に行えるようになった。 平成25年度には、 「N170は表語処理というよりは、複数の表記要素を一つの表語単位として(N170は顔認知でも出現すると言われるが、その場合は目、鼻、口などを一つの「顔」として)マクロに処理することと関連のある成分なのかもしれない」(池田ほか 2011)という仮説を検証するために最適な実験パラダイムを組み、脳波の収録を行った。 また、平成26年度に予定していたヘブライ文字を視覚刺激とした実験を前倒しで今年度中に実施することができた点で、昨年度の遅れを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に収録したデータを解析し、その所見を学会等で積極的に発表することにより、専門家から忌憚のない評価や批判を受ける。 可能な範囲でデータを増やす努力を行うが、近隣で20-30歳代のヘブライ語母語話者を見つけるのが困難なため、どれだけ増やせるかは未知数である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
人件費・謝金の交通費が見込み額よりも低くなったため、次年度使用額が生じた。 次年度、実験補助のための謝金として支出する。
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