2013 Fiscal Year Research-status Report
構造化されたエリシテーションの開発と意味研究への応用
Project/Area Number |
24652079
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 義樹 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20218209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 英樹 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20153207)
林 徹 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20173015)
唐沢 かおり 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50249348)
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Keywords | 言語データ / 言語的直感 / エリシテーション / 意味理解 / ダイクシス |
Research Abstract |
昨年度と同様、構造化エリシテーションの手法を開発するための方法論的検討と併行して、具体的データを使っての検討およびその予備的分析をおこなった。まず方法論の検討としては、研究代表者と研究分担者全員がひき続き定期的に会合を持ちながら、各自が国内外から集めた資料を持ち寄り、これまでの言語研究において当然のごとくおこなわれてきたエリシテーションの手法について、それが暗黙に依存している前提を解明するための方法論的検討をおこなった。その結果、従来のエリシテーションにおいては、(1) 母語話者間の相違は無視できること、(2) 母語話者の適格性判断の尺度が常に一定であること、(3) 母語話者の判断の揺れも言語データとして利用できること、(4) 質問同士の影響(先行する質問や回答からの後続する質問への回答に対する影響)はないこと、(5) エリシテーションによって得られたデータの信頼性は、分析結果が規則性を示せば示すほど高まること、などが想定された上で実施されていることが明らかになってきた。 次に具体的データを使っての検討としては、前年度同様、日本語の指示詞を対象に実験データの収集をおこなった。前年度に24名の参加を得ておこなった実験を、さらに12名に対しておこなった(ただし、うち1組2名のデータについては、音声を十分に拾うことができず、利用を諦めざるを得なかった)。すべての一次データ(映像・音声)の整理が終わり、一部のアノテーションが終わった。現在は、その結果を使い、エリシテーションによる結果との比較を試みているところである。 なお、研究分担者のひとりが平成25年度から副研究科長に就任したため、当初予定していた研究費の一部しか執行できなかった。計画を立てる段階で予期していなかった事態であり、研究協力者を募るなどして、来年度、当初計画を達成できるよう、様々な方策を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論的検討については、特にフィールド言語学と呼ばれる研究分野の調査報告をサーベイし、「研究実績の概要」で言及したような条件がエリシテーションによる調査の暗黙の前提となっていることが明らかとなった。その結果、こうした前提をアプリオリに前提とするのではなく、調査の中で明示的に確認するような手順をエリシテーションに組み込むことが、本研究課題の目指す「構造化されたエリシテーション」を実現するためのひとつの方法である、という具体的な認識に到達することができた。 その一方で、指示詞に加えてボイス現象も検討する予定であったが、指示詞に関する実験の参加者を追加したことや、その分析に時間を取られた結果、ボイス現象まで扱うことができなかった。分担者のひとりが副研究科長になるという、当初予定していなかった状況の変化のためである。この点で、実験的検討については若干遅れていることを認めざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
ヴォイス現象は、指示詞と並んで、おそらくすべての言語に見いだされる特徴のひとつである。そのような一般的な言語現象にもかかわらず、その意味分析は困難を極める。従って、次年度扱うヴォイス現象において、本研究課題が目指す「構造化されたエリシテーション」の手法の有効性を示すことができれば、言語研究に対する大きな貢献となる。特に日本語には「被害の受身」と呼ばれる特異な受身文が存在する。これまでの研究は、エリシテーションによって得られたデータに依りながら多くの事実を明らかにしてきたが、残念ながら説得力のある意味記述には至っておらず、諸説が共存している状況である。指示詞と並んで、次年度はヴォイス現象を集中して扱うことにより、研究の推進を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度終了予定であった日本語指示詞に関する実験について、本年度補足的な実験をおこなった結果、その分析等を本年度中に終わらせることができなかったことの影響で、当初予定していたヴォイス現象に関する研究が実施できなかった。すでに説明したように、これは、研究自体に起因する困難等による他に、分担者のひとりが校務に忙殺されるという、予期していなかった事態による。また、特に理論的な考察において、当初の予想以上に参照すべき文献や資料が多かったことも、研究の遅れの原因のひとつであると言える。 本年度おこなった理論的検討と実験結果に基づいて、構造化されたエリシテーションの手法を具体的にヴォイス現象に適用し、その有効性と限界とを検証する。そのために、指示詞の場合と同じく、実験とアンケートを計画している。実験やアンケートに必要な物品費、および謝金費として予算を支出する計画である。 以上の研究と併行して、積極的に海外において研究成果を発表したいと考えている。現在いくつかの大学や研究期間と連絡を取り合っているところであり、海外旅費を使用する計画である。また、最終年度として成果を取りまとめ、「構造化されたエリシテーション」のためのマニュアル等の作成を考えており、そのための印刷費等を支出する予定である。
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Research Products
(7 results)