2012 Fiscal Year Research-status Report
終助詞の感受性に及ぼす対人調整能力の影響:事象関連電位に基づく検討
Project/Area Number |
24652080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
木山 幸子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 長寿医療工学研究部, 研究員 (10612509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉岡 賀津雄 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (70227263)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 実験語用論 / 終助詞 / 事象関連電位 |
Research Abstract |
当挑戦的萌芽課題では、発話に含まれる終助詞「よ」および「ね」に対する感受性における個人差について実験的に検討するものである。日本語の会話では、「よ」や「ね」の使い方を誤るだけで聞き手に悪印象を与え得る。たとえば、先生に叱られた「わかりましたね?」と念を押され、生徒が「わかりましたよ」と答えると、反抗的ととられてしまう(滝浦, 2008)。終助詞に対人関係を調整する機能があるとすると、その使い方への感受性は個人の対人調整能力によって異なると予測される。 初年度の平成24 年度に、予備調査を経て行動データおよび脳波から観察される事象関連電位(event-related potentials: ERPs) のデータを計測した。音声提示された対話に含まれる終助詞「よ」と「ね」の適切性を判断する間に惹起される脳波(事象関連電位)を検討する実験を実施した結果、反応時間の観点からもERPs の観点からも、終助詞「よ」と「ね」の感受性には、一貫して自閉症スペクトラム指数の下位概念の1 つである「注意の切りかえ」の特性が有意に影響していることが示された。 このことについて、行動データの結果を日本言語学会で発表し、大会発表賞を受賞した。またERPs データの結果をヨーロッパの心理言語学の国際会議“Archtechture and Mechanism of Language Processing (AMLaP)” において発表した。行動データの結果は国内学術誌に投稿中であり、ERPs データの結果については国際学術誌に投稿すべく論文執筆中である。さらに残る期間で、この結果を確実にするためにERPs 追試実験を計画中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度の平成24年度には、予備実験を経てERP本実験のプログラムを完成させるまでを予定していた。しかし、すでに24年度中に本実験を行うことができ、その成果を国際学会(Archtecture and Mechanisms of Language Processing: AMLaP: 2012)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度である平成24年度にERP実験を行った結果、個人の認知スタイルが終助詞の適切性判断に関わることが示唆された。平成25年度は、この影響関係についてさらに精査するために追試検証を行う。対人調整能力(自閉症スペクトラム指数の低さで想定)の高い群と低い群との比較を可能にするために、より多人数のデータを得る。 得られたデータについては、専門家の助言を得て解析を進める。これを日本言語学会およびアメリカで毎年開催されるCUNY Conference on Human Sentence Processingにて発表し、関連領域の研究者たちからコメントを受ける。これらの議論を経て、国際学術誌に投稿する。このような学術的発表に加えて、成果をより一般的に還元するために、研究分担者とともに公開シンポジウムを開催し、終助詞と対人調整能力の関わりについて話題提供し日本語の言語コミュニケーションについて議論を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ERP実験の追試における費用に充てる。被験者(1人4,000円×40名)への謝金や、実験にかかる消耗品が必要となる。また、得られた成果を発表するために、学会発表にかかる費用や国際誌へ投稿するための英文校閲の費用に使用する予定である。
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