2014 Fiscal Year Annual Research Report
メディアの影響を組み込んだ言語の習得と変化に関する理論モデル構想のための試み
Project/Area Number |
24652082
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
太田 一郎 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (60203783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹村 亜紀子 神戸大学, その他の研究科, 研究員 (50597309) [Withdrawn]
宇都木 昭 名古屋大学, 国際文化研究家, 准教授 (60548999)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会言語学 / 言語変異理論 / 社会音声学 / メディア / 言語変化 / 方言 / アクセント |
Outline of Annual Research Achievements |
近年鹿児島方言若年層の語アクセントでは,従来の起伏式/平板式の音調を入れ替えて,標準語と同じ音声特徴を持つようする「アクセント型の交替」が見られる。本研究ではこの交替はテレビ等のマスメディアの影響によるものと仮説を立て,発話データと話者要因,メディア要因の関連を検討し,メディアの影響を含めた言語変化モデルの構築を試みた。 若年層20名と高年層10名の話者から,単語読み,単文読み,台本のある会話,自然談話の4種類の音声を収録した。若年層は単語読みでは多数のアクセント交替が観察されたが,話者要因,メディア要因との関連は複雑で,整理された結果の報告にはもう少し時間が必要である。ただし世代差を見ると,方言読みでは高年層では安定して従来型が現れるのに対し,若年層では交替型が多いことから言語変化が進みつつあると分かる。また標準語読みでは若年層はうまく標準語アクセントを産出することから,高度なバイリンガル能力を持つと推測される。問題は,ほとんどの親が鹿児島方言話者なのに,なぜ子どもはバイリンガルになるのかという点である。言語習得のどこかで標準語の入力が必要であり,幼児期のメディア利用との関連がと疑われる。 若年層の単文読みと台本会話では,多変量解析の結果,現在のメディア利用および幼児期のアニメ視聴との間に関連が示された。起伏式音調への対応では情報番組の視聴,平板式音調では幼児期のアニメ視聴,ポップカルチャー番組の視聴などが影響を与えていることが示唆された。言語変化に対するメディアの影響を一定程度統計的に確認はできたことは本研究の成果であるが,特定の番組ジャンルやコンテンツ等への話者の志向性と,メディアの言語特徴を取り込んで言語システムを構築していくことにどのような認知過程が関わるのかは不明である。ただし聴取実験からはこの結果を支持することができなかったのでさらに検討が必要である。
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Research Products
(5 results)