2012 Fiscal Year Research-status Report
ビジネス上の接触場面で生じる問題意識に関する実態調査-中国人元留学生を対象に-
Project/Area Number |
24652102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 明子 九州大学, 留学生センター, 助教 (30600613)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ビジネス日本語 / 元留学生 / アジア人財 / 日本企業 / 工学系 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本企業に就職した中国人元留学生が日本人社員と仕事をする中で感じる問題意識を明らかにすることである。本研究では、問題意識の抽出と抽出された問題意識を抱く背景や要因について探る。 初年度は、研究実施計画通り、中国人元留学生が職場で抱いている問題意識の抽出を行った。具体的な内容と成果は以下の通りである。 1、インタビュー調査:問題意識を抽出するため、まずインタビュー調査を行った。調査対象者は、アジア人財資金構想プログラムに参加し、国内の日本企業に就職した中国人元留学生18名(就職1年目から3年目まで)で、全員工学系の大学院(修士・博士)を修了している。職種や業務内容はインタビューの前にフェイスシートで確認した。インタビューは半構造化インタビューにより行い、業務を行う中で感じること、日本語の問題、職場の人間関係、社会人になっての変化等について質問した。 2、問題意識の抽出:インタビューは全て文字化し、質的データ解析ソフトを使用してコーディングを行った。その結果、日本語運用力や業務に関する知識の不足、状況を見て判断・行動することや人付き合いの難しさ、業務のやり方などに問題を感じていることが分かった。また今回の調査では、問題意識以外に、業務を行う際に気をつけていることや日本企業に対する肯定的な意識も抽出された。さらに、これらの意識を抱く背景として、文化差というよりも新卒であることが大きく関わっている可能性があることが窺われた。 今回抽出できた問題意識及び意識については、現在カテゴリー化及び分析を進めており、その成果の一部を平成25年度の学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、予備調査及び本調査、コメントの抽出までを予定していた。現段階の進捗状況は下記のとおりである。 1、予備調査:8月に入社1、2、3年目の元留学生3名にインタビューを実際し、インタビュー項目及び方法が適切であるか確認した。 2、本調査:9月から1月にかけて、15名の中国人元留学生にインタビュー調査を実施した。 3、コメントの抽出:インタビュー調査と同時並行で文字起こし及びコーディングを行った。初年度は問題意識に関わるコメントの抽出までを予定しており、現段階でコーディング作業はほぼ終了している。また、並行してカテゴリー化も徐々に進めているところである。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は下記の通り研究を進めて行く予定である。 1、抽出した問題意識の分析:問題意識をカテゴリー化し、分析を行う。当初、文化・情意面に焦点を当てた意識の抽出を行う予定であったが、文化・情意面以外の問題意識も抽出されたことから、抽出対象を広げ「問題・困難を感じていること」という枠組みでコーディングした項目を分析している。ここで得られた成果の一部を次年度の学会で発表する予定である。 2、次の調査に向けた準備と調査の内容:次年度の課題は、抽出された問題意識が一般化できるものか検討すること、問題意識を抱く背景を明らかにすることである。そのために、まず抽出された問題意識を質問項目とした質問紙を作成し、問題意識が一般化できるものか調べる。その後、問題意識を抱く背景・要因を明らかにするために、調査対象者自身に問題意識を抱いた理由について語ってもらう。 3、調査:初年度のインタビュー対象者に再度調査を依頼し実施する。 最終年度は、次年度に実施した調査の分析及び本研究で得られた成果の発表・まとめを行う予定である。成果の一部は、今後のビジネス日本語教育の授業活動・教材作成の基礎資料となるような形で整理し、まとめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、物品費からラップトップパソコンとICレコーダーを購入する予定であったが、すでに所有しているパソコンとICレコーダーで調査及び研究の遂行が可能であったため、購入しなかった。その代わり、分析に必要なソフトウェアを物品費で購入したが、その差額があったため、初年度の助成金が残った。 次年度は、初年度に使用しなかった助成金を旅費に回し、調査を進めながら初年度の成果を学会で発表する予定である。その他については、予定通り、分析に必要な書籍や備品等を購入するために物品費を使用し、データ収集及び整理のために人件費・謝金を使用する予定である。
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