2013 Fiscal Year Research-status Report
ビジネス上の接触場面で生じる問題意識に関する実態調査-中国人元留学生を対象に-
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24652102
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 明子 九州大学, 留学生センター, 助教 (30600613)
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Keywords | 外国人社員 / 元留学生 / 日本企業 / 意識の変化 / ビジネス日本語 |
Research Abstract |
本年度は主に、1、昨年度に実施した調査結果のまとめ、2、昨年度の調査結果をもとにした継続調査、を行った。 1、昨年度の調査結果のまとめ: 調査の目的は、日本企業に就職した元留学生が職場で抱える問題意識を明らかにすることである。研究方法としては、調査対象者の視点を重視し、職場で何が起きているか、その実態をデータから立ち上げるため、質的分析を採用した。インタビューは全て文字化し、コーディング及びカテゴリー化を行った。その結果、主に「コミュニケーション行動」「業務・仕事のやり方」「キャリア形成」「心理面」において問題意識を抱えていることが明らかになった。カテゴリーの比較検討を通し、日本企業で働く上では「論理的コミュニケーション能力」「自分で状況判断し、行動する力」が求められていることが分かった。また、自分の能力や知識不足など、元留学生が自分自身に対して問題を感じる傾向が見られたこと、そして、日中の文化の相違をそれほど感じていないことから、就業経験がない新卒者の場合、学生から社会人へのトランジションが問題意識に影響を与えていることが明らかになった。 2、継続調査: 昨年度の調査を通して、新卒という属性が元留学生の職場で抱く意識に影響している可能性があること、職場では「問題」意識だけを抱えているわけではなく様々な気付きを通した意識の変化が起きていること、また、担当業務と意識の変化には関連があることが分かった。そこで、本年度は、問題意識に特化せず、元留学生が職場で抱く意識の変化及びそのきっかけとなる経験を明らかにすることにより、元留学生社員の実態解明を試みた。また、意識の変化と同時に能力の変化も明らかにすることで、ビジネス日本語教育で育成すべき能力の項目化を目指した。調査は、昨年度の調査対象者に半構造化インタビューを行い、現在文字化したデータをもとに、質的分析を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における研究課題は、【1】元留学生の視点から元留学生が日本人社員との接触場面において感じる問題意識を明らかにすること、【2】その問題意識をどのようにして抱くようになったかという背景を明らかにすること、である。 平成25年度は、平成24年度に収集した【1】のデータの分析及びまとめ・発表、【1】の結果をもとに【2】の調査計画を立て、インタビュー調査を実施する予定であった。交付申請書の段階では、文化・心理面に関する問題意識を抽出することにより、元留学生と日本人社員の接触場面における異文化コンフリクトを明らかにしようと考えていたが、【1】の調査の分析を進めるに当たり、元留学生が自国と日本の文化差を強く感じていないことが明らかになった。そこで、【2】の調査内容を再度検討し、職場における意識の変化及び変化が起きたきっかけを明らかにすることを研究課題として、継続調査を行った。 以上をまとめると、平成25年度に実施した内容は下記のとおりである。 ①【1】の調査の分析、②【1】の調査結果の発表(国際学会口頭発表、論文作成)、③【2】の調査計画の練り直し、④【2】の調査実施、⑤【2】の調査で得られたデータの文字起こし及び分析 調査内容に変更は生じたものの、現段階で研究課題【1】に関する調査結果をまとめ、【2】の課題の調査まで終えて分析に入っており、最終目標であるビジネス日本語教育及び留学生の出口支援に還元できる基礎データの蓄積に向かって着実に進んでいることから、全体として研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、当初の計画通り、平成25年度で得られたデータの分析及びまとめを中心に、下記の通り研究を進めていく予定である。 ①平成25年度で得られたデータを分析し、まとめる。(学会発表、論文等) ②過去2年で得られた調査結果を総合的にまとめる。(学会発表、論文等) ③本研究で得られた結果を、ビジネス日本語の現場、及び大学における留学生の出口支援に還元できるような形で発信する。(研究会、勉強会などの開催及び発表等) また、平成24年・25年度の調査結果より、元留学生が職場で抱く意識に「新卒」という要因が関わっている可能性があることから、日本人新卒社員が抱く意識との比較検討を行う必要があると考えている。実際に、平成25年度は、1名の日本人新卒社員(工学系修士卒、技術系の職種、新卒)に元留学生と同じ内容のインタビューを行った。平成26年度は、更に数名の日本人新卒社員にインタビューを実施し、元留学生の結果との比較検討を行いたい。この結果は、上記の②に組み込む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、昨年度の計画通り、初年度に使用しなかった助成金を旅費に回し、海外の学会で成果の一部を発表した。しかし、本年度は、初年度と同じ調査対象者にインタビューを依頼することで、初年度に比べ効率的に調査を実施することができたため、それほど旅費がかからなかった。 最終年度は、主に研究成果の発表(学会、研究会等)に助成金を使用する予定であった。しかし、本年度の調査結果を踏まえ、新たに日本人新卒社員へのインタビュー調査を実施することにしたため、最終年度は、旅費の一部をインタビュー調査に充て、データ収集・データ整理のために人件費・謝金を使用する予定である。
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