2012 Fiscal Year Research-status Report
ディスレクシア学習者に対する教授法開発―教員養成における指針の策定と手引書の試作
Project/Area Number |
24652105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
池田 伸子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (30294987)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ディスレクシア / 日本語教員養成 / 日本語教授法 / 教育工学 |
Research Abstract |
平成24年度は、主に海外の研究協力者とともに、読み書きに障害をもつ学生支援の進んだ国における事例の収集および実態調査を行うことを目的として取り組んだ。具体的には、ヨーロッパのイギリス、フランス、さらにはスロヴェニアの事例や実態を文献、現場の教師、学校関係者からの聞き取りなどを通して収集した。さらには、北米の高等教育機関における学習支援実態等について、主に文献から情報収集を行った。また、本研究のもう1つの目的である、日本語教員養成のためのハンドブック開発のための基礎研究として、海外において教育機関及び教員向けに発行しているハンドブックを調査し、そこに含まれている項目等について比較検討を実施した。以上の調査を基礎として、日本語教育の現場に立つ教員が、ディスレクシアについて知っておくべき項目は何か、指導の際に留意すべき点はどんな点かについて、国内国外の日本語教育関係者と意見交換を始め、ハンドブックで取り上げるべき項目の選定作業を開始したところである。また、ディスレクシア研究は、主にアルファベットを文字とする言語における研究が主流であり、日本語のように特殊な文字体系を持つ言語における研究がほとんど見られないため、数少ない中国語における文献、アラビア語における文献等を参考にしつつ、言語(主として音韻と文字)の観点から、日本語とディスレクシアの関連について明らかにすべく、文献調査を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標である、国内外の事例や情報の収集については、当初の計画通りに進行している。また、調査や研究に必要な文献の収集も順調に進展した。しかし、ディスレクシアを持つ学習者への対面の聞き取りや、海外の教育機関における聞き取り調査等は実施できていないため、「おおむね」と言わざるをえない状況である。しかし、対面聞き取りや海外における聞き取り調査は、25年度に実施予定であるため、本研究全体としての進捗については、それほど大きな問題とはなっていない。以上の状況からこのような自己評価にいたった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施できなかった、海外での聞き取り調査及び中国語圏の事例・実態調査を25年度前期中に実施する。 また、25年度には、24年度および25年度前期の調査を基礎として、ディスレクシアを抱える学習者に対する日本語教授法および教育教材の開発を開始する。まずは、ひらがな・カタカナ等の表音文字教育のための教授法・教材、次に漢字教育のための教授法・教材、そして最終段階として語彙・読解教育のための教授法・教材開発に着手することを目指す。教材開発にあたっては、コンピュータ等の新しいメディア利用の可能性を積極的に模索し、より効果的な教材開発を行う。 また、日本語教育の現場に立つ教員を養成する課程において、ディスレクシアについてどのような事柄を指導すべきかを整理し、ハンドブックの作成にも取り掛かる。 さらには、研究協力者が一同に集まり、2年間の研究成果を発表する機会を設ける予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に実施予定であった、海外での聞き取り調査、および中国語圏の研究協力者からの情報収集が達成できなかったことから、次年度使用額が生じた。これらについては、25年度に実施し、研究の遂行に障害とならないように対応する予定である。 25年度は、引き続きフランス、イギリスの研究協力者に加えて、中国、スロヴェニアの日本語教育関係者にも研究協力をお願いし、それぞれの国における実態調査を行うことで、謝金を使用する予定である。さらに、文字表記、語彙、読解の教材開発を実施するために、さまざまな文献調査等も実施する(物品費等を使用予定)。 さらに、25年度は国内外の研究協力者が集まり、これまでの調査研究の状況や成果を話し合い、発表できる機会(講演会やシンポジウム)を持つ予定であり、そこで旅費を使用する。
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