2012 Fiscal Year Research-status Report
脳機能からみる日本人英語学習者の英語文学読解プロセスの特徴の研究
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24652126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
西原 貴之 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (50469590)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 英語文学読解プロセス |
Research Abstract |
本研究は、脳機能計測装置を用いて、日本人大学生英語学習者の英語と日本語における文学読解プロセスと説明文読解プロセスを調べ、大学における英語文学教材読解指導モデル構築のための基礎となるデータを得ることを目的としている。このためには、まず言語と脳の関係について現在どのようなことが明らかにされているのか調べることが不可欠である。そこで、24年度の研究は言語と脳、読解と脳に関する文献を収集し、収集した資料を精読する作業を中心として行った。結果として、言語と脳、読解と脳の関係を調べたこれまでの研究に関して、以下の3つの特徴を見出すことができた。 1点目は、言語を使用する際や読解を行う際に賦活する脳の部位に関する見解は、文献によって若干のずれが見られるということである。まだ、専門家自身が言語使用または読解を支える脳神経システムのモデルを構築している最中のようである。 2点目は、先行研究の中で異なる読解プロセスを比較した研究がないということである。本研究では文学読解プロセスと説明文読解プロセスの違いを調べる予定である。改めて本研究の独自性を確認することができた。 3点目は、ほとんどの研究が文や語句の処理を研究対象としているという点である。まとまった分量の文章を読む作業の調査はほとんど手がつけられていないようである。 また、文献研究を進める中で、調査方法についても多くの知見を得ることができた。特に次の2つの方法は大きな収穫であった。1つ目は、差分法(調査課題の実施方法)である。もう1つは、The Edinburgh Inventory(調査参加者の選定に関わるもので、調査参加者の利き手を調べる方法)である。これらは、本研究の調査の中でも採用したいと考えている。25年度以降に予定している調査方法の検討の中で具体的な実施方法について考えていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の具体的な目的は、(1) 学習者はテクストのジャンルに応じて異なった読解処理を行なっているのか、(2) 日本語と英語で読解プロセスは異なるのか、(3) 英語力によって英語文学読解プロセスは変化するのか、という3点を調べることである。(1) に関しては、①文学読解プロセスと説明文読解プロセスの特徴の整理、②調査材料の選定、③調査方法の最終調整、④調査の実施と分析、の4つの作業が必要となる。(2) に関しては、①母語と外国語での読解プロセスの違いの整理、②調査材料の選定((1) の②と共通)、③調査方法の最終調整((1) の③と共通)、④調査の実施と分析((1) の④と共通)、の4つの作業が必要となる。(3) に関しては、①外国語能力と外国語文学読解能力の関連性の整理、②研究課題 (1) と (2) で得られたデータの再分析、③調査材料の選定、④調査の実施と分析、の4つを予定している。 上記の作業のうち、24年度は、(1) の①②、(2) の①②、を行うことを予定していた。このうち、(1) ①と (3) ①に関しては、研究実績の箇所で述べた通り、24年度中に資料を収集し、文献を読み作業を行うことができたため、進めることができた。しかし、精読した研究の総括を終えることができなかったため、当初の予定よりも若干の遅れが生じている。(1) (2) の②に関しては、現在選定の途中であり、24年度中に確定することができなかった。一方で、上記の (1) ①と (3) ①の作業を進める中で、25年度以降に取り組む予定としていた調査方法((1) と (2) の③)についてその実施計画の検討を少し進めることができた。 以上、前倒しで進めることができた点もあるが、全体としては24年度中に計画していた作業を完全に終えることができなかったため、「(3) やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、具体的目的 (1) 学習者はテクストのジャンルに応じて異なった読解処理を行なっているのか、と具体的目的 (2) 日本語と英語で読解プロセスが異なるのか、に関しては、③調査方法の最終調整と④調査の実施、をそれぞれ予定している。具体的目的 (3) 英語力によって英語文学読解プロセスは変化するのか、に関しては、①外国語能力と外国語文学読解能力の関連性の整理、を予定している。具体的目的 (1) (2) の調査方法に関しては、他学科所属または他大学所属の研究者の助言を仰ぎながら、最終的な方法を確定する予定である。また、脳機能計測装置の貸し出しを行っている業者とスケジュールを確認し、どの時期にどれくらいの期間で調査を実施するかを確定し、その計画に沿って調査を実施する。また、調査協力者および調査時のアシスタントについても募集を行う。具体的目的 (3) に関しては、引き続き文献を収集・精読しながら、これまでの研究で明らかになっていることについて整理を行う予定である。 これらのことに加えて、24年度中に終えることができなかった作業(文学読解プロセスと説明文読解プロセスの特徴の整理、母語と外国語での読解プロセスの違いの整理、調査材料の選定)についても急ピッチで進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、24年度予算の残額であるが、これは引き続き資料収集に使用する予定である。脳科学分野の進展は非常にスピードが速く、本研究も脳と言語の関係に関する最新の情報を反映したものとなるように、関連のある文献が出版された場合は、その文献を素早く入手する。 25年度の予算の内訳は、人件費・謝金が20万円、その他が100万円となっている。25年度は調査の計画及び実施がその中心的な作業となる。人件費・謝金の20万円分は、調査実施に際しての調査アシスタントに関する人件費と調査参加者への謝金として使用を計画している。その他の100万円は、主に調査で使用する脳機能計測装置に関わる。具体的には、脳機能計測装置のレンタル料、それに関わる手数料(装置の輸送費、装置のセットアップ料、取扱い指導料)として使用する予定である。なお、25年度は調査の具体的な目的のうち、(1) 学習者はテクストのジャンルに応じて異なった読解処理を行なっているのか、(2) 日本語と英語で読解プロセスが異なるのか、という2点のみを調べる予定である。これら2点の調査結果を踏まえ、26年度にはさらに (3) 英語力によって英語文学読解プロセスは変化するのか、という点を調査する予定としており、26年度はこの点を調べるための予算として人件費・謝金(調査アシスタントに関する人件費と調査参加者への謝金)とその他(脳機能計測装置のレンタル料とそれに関わる手数料)を請求する予定としている。また、26年度には本研究課題の成果についても発表を行っていく予定であり、そのための旅費の請求も予定している。
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