2012 Fiscal Year Research-status Report
教室談話に見られるポライトネス-日英教室談話の比較分析から
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24652130
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
山下 早代子 明海大学, 外国語学部, 教授 (90220334)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 教室談話 / ティーチャートーク / ポライトネス / フェイス / 日英対照比較 / 会話分析 / 言語教育 / インターアクション |
Research Abstract |
本研究は、Brown & Levinson(1987/田中監訳, 2011)のポライトネス理論をベースに、外国人学習者を対象とした日本語教育と日本人英語学習者を対象とした英語教育の教室内コミュニケーションを分析し、ポライトネスの視点からその共通点(普遍性)と相違点を検証することを目的とする。具体的な課題は、日本語授業および英語授業のデータから、ポライトネス理論の要であるポジティブ・フェイスとネガティブ・フェイスに焦点を当て、相互作用による共同構築の形としての教室談話(教師と学生のインターアクション、学生と学生のインターアクション)の特徴はなにか、日英両教室談話に違いがあるか、を分析し、B&L理論のポライトネスの普遍性を検証する。 初年度である平成24年度は、海外の動向を探り、先行研究を整理し、理論的基盤を強固なものにすること、そして英語教室談話データを収集し、データ入力をすることを主たる課題とした。海外の動向については、国際語用論学会の機関専門雑誌や国際大会の動向を調査した。平成24年6月には招聘されてベトナムのフエ大学に出講し、語学教師を対象にPoliteness and Language Education(「ポライトネス理論と言語教育」)のタイトルで講演を行った。ベトナムの教育現場では、まだポライトネス理論について知識のある教員は少なかった。先行研究はポライトネスをテーマとした主として会話分析による研究を中心に読み込み、本研究に関わる部分を確認した。 日本人学習者を対象とする英語教育教室談話データは平成24年12月に録画を収録した。現在アメリカ人ネイティブの補助者により文字起こし作業を実施中である。 比較する日本語教育教室談話データはすでに収録済で、比較研究を行う前段階として論文にまとめ、平成25年3月『明海大学応用言語学研究科紀要第15号』に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では初年度であるH24年には以下の1)~4)の達成を目指した。 1)海外の動向を探る、2)先行研究を整理する、3)日本語教室談話のデータの分析をポライトネス理論の枠組みにそって開始する、4)英語教室談話データを収集する。 1に関しては、所属するIPrA(International Pragmatics Association国際語用論学会)やSLA(Second Language Acquisition)関係の学会の動向を探った。当初予定の欧米の学会ではなく、招聘を受けたベトナムのフエ大学にて発表し、研究者と意見交換をした。 2に関しては、理論的枠組み(ポライトネス、会話分析、談話分析、第二言語習得理論)と実際の応用(教室談話、教室での学習による習得、相互作用、コミュニケーションの場の共同構築など)の理解を深めるため、海外や国内で発表された論文を収集し、知見を深めた。3はすでに収集されているデータ[H16-19の科研(B)(代表:村岡英裕)] の日本語教室談話に関しての40コマ(1コマ90分)3600分(60時間分))を再考察中である。4はM大学の英語授業を教員と学生の同意を受けて録画収録し、現在文字起こしを行い分析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語と英語の教室談話を比較・対照分析し、相互作用による共同構築の形としての教室談話に見られるポライトネス理論の普遍性を検証する。以下のような予定とする。 1)日本語教室談話中の相互作用による共同構築の形をポライトネスの視点からまとめる。相互作用による共同構築の形は、Jacoby, S. & Ochs, E. (1995) の枠組みを用いる。ポライトネスの視点とは、ブラウン&レビンソン(1987/2011)田中典子監訳、山下早代子他訳で議論される、フェイス(人に認められたい、よく思われたいとするポジティブ・フェイスとそれに配慮したポジティブ・ポライトネス、そして、触れられたくない、放っておいてほしいとするネガティブ・フェイスとそれに配慮するネガティブ・ポライトネス)に関するやりとり、さらに教室内でのフェイス威嚇行為(FTA-Face Threatening Act)の関わりと補償行為、あるいは回避の出現の有無等を出現例を中心に分析する(*下図参照)。さらに、以下の2)も同様の枠組みで分析する。 2)英語教室談話中の相互作用による共同構築の形をポライトネスの視点からまとめる。3)上記1)2)の教室談話をポライトネスの視点から対照分析する。[経費:研究補助謝金]4)教室談話に見られる文化差の影響の有無とポライトネスの視点からの普遍性を検証する。本研究のデータとする日本語教室談話は、様々な国籍の大学院生のもので、英語教室談話は、日本人英語学習者の大学生のクラスとなる。5)上記の研究成果を海外の学会(場所は未定だが、言語習得、あるいは語用論関係の国際学会)で発表し、評価を得る。[経費:海外渡航費+学会登録参加費] なお、すでにH25年9月にインドで開催予定のIPrA国際語用論学会には参加(発表)が決定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・研究補助謝金 ・海外学会参加渡航費&滞在費(インド・ニューデリー) ・学会参加費 ・物品費(雑費)
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