2014 Fiscal Year Annual Research Report
「農業・牧畜境界地帯」から構築する新しいユーラシア史像の試み
Project/Area Number |
24652137
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森部 豊 関西大学, 文学部, 教授 (00411489)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 農業・牧畜接壌地帯 / イル・ハン国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,東ユーラシア世界で見られる草原世界と農耕世界との境界域,すなわち「農業・牧畜接壌地帯」の歴史的性格・特質が,ユーラシア全域で普遍的に見られるものであるのかを検証してくことを目的としてスタートし,本年度をもって最終年度を迎えた。 本研究は,モンゴル帝国史,近代中央アジア史,ハンガリー史,中世ロシア史の専門家と連携し,かれらのフィールド調査能力と知見を受けつつ,景観調査とそれにもとづく討論を経て進行してきた。ただし,最終年度は予算不足のため,研究代表者一人の調査のみとなってしまい,討論が不十分であった。 最終年度の平成26年は,ロシア南部の平原調査を行う予定であったが,ウクライナ紛争の影響で,この調査を断念した。その代わり,かつて騎馬遊牧民のモンゴルが西アジアで支配した空間,イル・ハン国(フレグ・ウルス)の支配地域であったイランを調査対象に変更し,この地の景観調査とイルハン国時代の遺跡の調査をおこなった。 この結果,イラン高原におけるモンゴル統治者が,その支配時期においても相当な距離を移動しつつ遊牧というライフスタイルを維持していたこと,各地には定住民を意識した都市が建設されたことを確認することができた。この問題は,モンゴル帝国史研究の東アジア方面の研究成果と比較し,再検討しなければならない。また,東ユーラシアに見られるような草原世界と農耕世界がクロスするようなベルト地帯が存在し,そこに西アジアの歴史を動かすような潜在的軍事力が存在したかどうか等の問題についても,今後の課題として残った。
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Research Products
(6 results)