2012 Fiscal Year Research-status Report
「帝国」としての徳川日本と東北アジア―支配領域と商品生産・流通・消費の空間構造―
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24652138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
藤田 加代子 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (90454983)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 帝国 / オランダ東インド会社 / 徳川日本 / 琉球 / 銀 / 生糸 / 繊維製品 / 砂糖 |
Research Abstract |
本研究は、今年度に開始した個人研究計画‘Tokugawa Shogunate as a Small Empire in Eastern Asia: The Spatial Structure of the Japanese Economy and Territorial Dynamics, 1550-1850'(計5年計画)の理論的考察と実証的研究の基盤部分に相当する。江戸時代の日本が領域の南北にある異国(琉球王国)・異域(蝦夷地)に中国・日本国内市場向け商品の生産を強いる「帝国」的な政治的・経済的実体であったことを論証し、同時代の世界各地の「帝国」との比較を行なう。 上の目的を達成するため、年度当初に(1) 日本語・英語で出版された先行研究の収集・精読・データ整理、(2) 主として国内の機関に所蔵される史資料の収集とデータ整理、という計画目標を設定した。そして、今年度は「『帝国』の生産・流通構造および物質文化の変容」を大きなテーマとし、主として繊維製品・砂糖・海産物の三品目について関連文献の収集と一次・二次資料の閲覧を行なった。 成果としては、(1)琉球王国と日本の砂糖に関する生産・流通・消費のあり方と同時代のカリブ海域―ヨーロッパの比較を中心としたサーヴェイ論文を執筆し、海外の学術雑誌に投稿した(依頼原稿。査読中)。また、(2)16世紀から19世紀における中国・東南アジア・インドからの生糸・絹織物輸入と徳川日本の輸入代替化に関する論文を執筆した(依頼原稿)。この論文を収録した論文集は平成26年中にオックスフォード大学出版局から刊行予定である。 上記の成果はいずれも本研究を含む研究企画の最終成果物としての英文学術書(平成28年度末の脱稿を予定)に何らかの形で収める予定である。全体として、研究の初年度としてはおおむね満足すべき成果をあげたと言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、先行研究(16~19世紀世界の「帝国」に関する実証的・理論的研究と近世アジアの経済史に関する文献・史料)を網羅的に収集・精読し、データ整理を重点的に行なう計画であった。多言語かつ大量の文献の読み込みと史料研究に特化することを予定した初年度としては、刊行には至っていないものの既に英文で成果の一部を提出できたのは、順調な研究のすべり出しを示していると考える。ただしそのうち一点は研究動向のサーヴェイなので、次年度以降は一次資料の分析から得られた知見を論文として公表していくことが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
主として次の二点を重点的に実施する予定である: (1) 平成24(2012)度に引き続き、グローバル経済史・日本経済史・世界の物質文化研究に関する先行研究の精読とデータ整理。 (2) おもに夏期・冬期の長期休暇を利用した国内・海外所在の史資料の収集とデータ整理。 後者については、次の二つの調査を計画している。 ・東京(国立公文書館、東京大学史料編纂所、国会図書館)にて蝦夷地・琉球と日本・中国との貿易に関する一次・二次資料を調査する。 ・オランダ・イギリス(オランダ国立中央文書館、ライデン大学図書館、オランダ王立歴史地理民族学研究所、英国図書館)にて文書調査を実施する。特にオランダ・イギリス東インド会社史料(報告書類と会計帳簿)にみられるヨーロッパおよびインド産生糸・繊維製品の日本・中国(および琉球)むけ貿易に関する記録の抽出と整理を中心に行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として海外・国内における研究調査(主として交通費・滞在費)、史資料の複製・購入、英文校閲の三項目に研究費の多くを使用する予定である。平成25(2013)年度の交付予定額では海外調査の実施にあたって経費の不足が見込まれるため、平成24年度の繰越金を渡航費用にあてる予定である。
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