2012 Fiscal Year Research-status Report
近代タイ・中国経済関係に関する基礎研究―無朝貢・無条約下の貿易問題
Project/Area Number |
24652147
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小泉 順子 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (70234672)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東洋史 |
Research Abstract |
本研究は1854年から20世紀初頭に至る約半世紀間におけるタイ(シャム)と中国との経済関係について、無朝貢・無条約という正規の外交関係なき条件に着目し、両国間の経済的関係の実態と貿易や移民の拡大にともなって生じた諸問題に対する対応を、タイ側の史料を軸にしつつ中国や西欧等の史料を照らしあわせながら検討することを目的としている。初年度における調査の成果は以下のとおりである。 (1) 当該時期におけるシャムの対中国経済関係に関する先行研究を収集・整理・検討した。 (2) マカオも含めた中国側の史料調査を実施し、シャムとの貿易や移民の状況、および関連して両国の間に生じた問題に関する資料を収集した。また広州およびその周辺において実地調査を実施し、対シャム貿易の地勢的条件について確認した。 (3) イギリス領事報告などから、19世紀後半から20世紀初頭のバンコクにおける輸出入に関わる統計的情報を確認した。また税関で作成した貿易統計や徴税請負制度などに関する情報など、シャム側の史料を収集・整理した。なおシャムの貿易や移民の出入国については統計的把握が難しい状況が同時代資料にも指摘されており、検疫に関わる情報など異分野の史料を組み合わせてアプローチする必要性が確認された。 (4) 19世紀末から20世紀初頭のシャムにおける中国人移民の管理に関わる史料の一部をまとめ、国際ワークショップにおいて発表した。中国人移民に対する登録・課税制度の変更はこれまで主に国内的条件から説明されてきたが、条約をめぐる外交的契機もかかわっていた可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・中国側・シャム側において史料調査を実施し、先行研究ならびに両国間の経済関係に関する基本的情報を確認することができた。 ・シャムにおける中国人移民の管理に関わる史料の一部をまとめ、国際ワークショップにおいて英語で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き史料の収集と分析を実施する。欧文史料の系統的な検討もすすめつつ、特にシャム側の史料を幅広く丁寧にあたることにつとめる。並行して分析結果をまとめ、和文・英文の論考として発表すべく準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①初年度に引き続き、シャム、中国で史料調査を実施する。また可能ならばイギリス等での史料調査もする。貿易や移民にかかわる基礎データを収集するとともに、コメなどの特定商品を事例としてとりあげ、より具体的な貿易の実態にかかわる史料を発掘・検討する。 ②貿易と移民に関わる基礎史料の検討を踏まえ、密貿易など、非公式な経済領域に関する史料の発掘につとめる。また検疫や郵便などにかかわる国際的なレジームも両国間のスムースな経済関係の運営に重要であったことが予想され、これらの側面についても検討を加える。 ③収集した資料は順次整理・検討して発表する。
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