2013 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期オーストリアにおける人民裁判と戦犯訴追―国家反逆罪と国民問題
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24652151
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 博子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (20335392)
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Keywords | 国民問題 / オーストリア史 / 戦争犯罪者裁判 / 人民裁判 |
Research Abstract |
平成25年度も引き続きオーストリア国民論の歴史的特徴について検討を行った。なかでも戦間期から第二次世界大戦後にかけて大きな問題系となっていたオーストリア国民の創出という課題の解決方法を明らかにするために、40年代から50年代にかけて行われた戦犯訴追の政策実践が変容する論理とその帰結を同時代史料に基づき分析した。とりわけ、リンツ人民裁判の訴追状況に対する地元メディアの反応を検討するとともに、米占領下の上オーストリア州およびザルツブルクにおける人民裁判への反応を調査した。そして、ナチズムと戦争の経験を、ドイツ国民ではないもう一つのオーストリア国民の認識枠組みへと統合していく政治社会的な動きを歴史的に跡付ける作業を進めた。25年5月には、来日中であったヘルムート・コンラート教授を特別講演会に招へいし、オーストリアの最新の研究状況に関する講演をしていただき、知見を深めるとともに、これまでの研究成果と今後の研究の方向性に関する意見交換を行い、プロジェクトの進捗状況に関する確認を行った。研究成果の一部は、”Creating a Victimised Nation: The Politics of the Austrian People’s Courts and High Treason”, Jie-Hyun Lim, Barbara Walker and Peter Lambert (eds.), Mass Dictatorship and Memory as Ever Present Past, Palgrave Macmillan: Basingstoke, Hampshire, 2013, pp. 62-83、大津留厚、水野博子ほか編『ハプスブルク史研究入門――歴史のラビリンスへの招待――』(昭和堂、2013年)として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国家反逆罪という国民の境界を形成した犯罪カテゴリーの成立とその内実の変容プロセスを丹念に追うことで、オーストリア国民か、ドイツ国民かという問題系においてナチズムと戦争の過去を克服しようとした社会政治的な取り組みが、これまで分析枠組みとして用いられていた「過去の克服」という規範的な考え方に収まらない歴史的な考察を必要とすることを確認し、その実証的な研究成果の一部を、日本語、英語による論文、およびその知見を日本語の歴史研究入門のにも生かすなど、研究は着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である26年度は、ウィーンの中央政府の政策展開について調査を継続するとともに、人民裁判に関するメディアの反応を分析する。また、占領国間での冷戦と国内に内発的に生じる冷戦対立の構図を解明し、東西冷戦との関連においてオーストリア国民の形成過程を位置づける作業をさらに進める。そのプロセスを実証的に跡付ける作業として、人民裁判史料の分析を続けるが、国民思想の複数の系譜を探究するために、ウィーンに加え、リンツの裁判記録を引き続き解読する。これらの成果も含め、3年間の研究成果を総合し、オーストリアの国民問題とナチ・戦争犯罪という過去の清算の問題がいかにしてオーバーラップしながら解決されたかを歴史的に考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は日本でインターネットなどを通して収集したメディア関連および裁判記録の解読を進めたことに加え、ヘルムート・コンラート教授の日本における特別講演会への招へいに重点を置く一方で、調査・分析の方向性を調整したため、海外への史料調査は26年度に集中的に行うこととなった。リンツおよびウィーンへの史料調査のための旅費として次年度への予算繰り越しが生じた。また、26年9月に開催予定のリンツ国際会議第50回記念大会に出席し、各方面の歴史研究者と意見交換を行う必要が出てきたことから、次年度使用額が生じた。 26年度は夏季または冬季に3週間程度ウィーンとリンツで史料収集を行う。そのための旅費が必要である。また、9月に開催予定のリンツ国際会議第50回記念大会に出席し、各方面の歴史研究者と意見交換を行う。オーストリア国民、人民裁判、冷戦に関する図書を購入する。
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Research Products
(5 results)