2012 Fiscal Year Research-status Report
日本文化における道教受容解明のための芸能に見る道教的要素の抽出
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24652169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
樹下 文隆 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (70195337)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 民俗学 / 国文学 / 古典芸能 / 日本文化史 / 道教 |
Research Abstract |
能・狂言を中心とした古典芸能・NHK等で放映された民俗芸能の映像を市販のビデオ・DVD等で収集した。実地調査としては、三重県磯辺町の伊雑宮田植神事、島根県津和野町の鷺舞、熊本県菊池市の松囃、岐阜県本巣市の真桑人形浄瑠璃を検分し、古態を残すと思われる部分をDVDで撮影した。また、以前より収集していたビデオ・DVD類をアルバイトの協力を得て内容確認を行い、整理・分類した。 神戸女子大学古典芸能研究センター、国立民族学博物館、及び国立国会図書館に赴き、所蔵図書・資料を閲覧するとともに、京都上賀茂神社を訪れて芸能の行われる場についての見聞を広め、また、朝鮮通信使フォーラムに参加するなど情報収集に努めた。その他、芸能語彙、古典芸能、民俗芸能、中世文化、道教文化に関する図書を購入した。また、実地踏査でネットに載る映像と比較できるよう、軽量のノートパソコンとLanアダプターを購入した。 今年度は情報収集に努めた結果、以前より蓄積していた分と合わせて、能・狂言についてはほぼ調査・研究対象とすべき映像を確保できた。ただ、DVDの収集に力を注いだ結果、調査報告書や研究書類の収集は、来年度に回すことになった。また、国立民族学博物館が相当数の東アジアの芸能記録を撮影しており、その映像を閲覧できることを年度の終わりに知った。来年度はこれらの調査を行うことになろう。 平氏政権時代の厳島舞楽について、中央の記録と在地の記録とを比較して得られた知見を、日本音楽学会西日本支部例会で発表することができた。席上、音楽史としても貴重であるとの意見を戴き、大いに励まされた。来年度は、この知見をもとに厳島に限らず地方における舞楽伝承についても調査を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の1年目なので、研究の目的に記したように、道教的思想・志向が日本文化の形成に与えた影響を解明するための手段として、古典芸能・民俗芸能の映像と、芸態・所作・装束・楽器に関する情報、詞章等の収集に努めた。 その結果、市販のビデオ・DVD等による古典芸能・民俗芸能の映像収集、実地踏査、既収集のビデオ・DVD類の内容確認と整理、古典芸能・民俗芸能関係の研究書・報告書の収集、道教及び語学・文学・歴史関係書の収集、映像を閲覧できる施設の調査、実地踏査及びインターネットによる情報収集用のパソコン購入を行うことで、研究体制を整えることができた。特に、国立民族学博物館がアジア諸地域の芸能映像を収集しており、閲覧可能であることを知った。道教的要素の抽出作業において、比較検討できる対象を得たことは、日本以外は専門外だったのでうれしい収穫であった。 実地踏査では、校務との関係で日帰り調査を中心とせざるを得ず、日程の合う催しを調査する程度であったが、田植神事、松囃、鷺舞、人形浄瑠璃と、それぞれ系統の異なる芸能を調査することができ、それに基づいて来年度以降の方針を立てることができた。特に、真桑人形浄瑠璃では、江戸期に発生したものであるものの、幕間に古態を残す田楽系の歌謡が歌われており、民俗芸能が在地の古い芸能を取り込みながら発展していく過程を確認することができたのは、予想外の収穫であった。 今年度は研究体制構築に重点を置いたが、発表する機会を得て、厳島舞楽の史的研究において得た知見を公表することができた。直接に道教的要素につながるかどうかは今後の課題だが、平氏政権時代の厳島舞楽、特に唐装束の内侍による舞楽が都人に大きな感動を与えたことは、唐風舞楽への回帰として注目すべきと考える。また、地方への舞楽伝播と地方から中央への還流という観点からも、地方舞楽を考察する必要性を認識することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、古典芸能・民俗芸能のビデオ・DVD類の収集、実地踏査、古典芸能・民俗芸能の芸態・所作・装束・楽器・音楽・詞章等を記した研究書・報告書・論文類の収集、研究論文の収集等による道教及び周辺諸学の研究動向の探索を行うとともに、国立民族学博物館等でアジア諸地域の芸能映像を閲覧する。特に、昨年度はあまり収集できなかった民俗芸能の調査報告書や研究所類を重点的に収集したい。 地方舞楽の展開とその内容の諸相について、収集した映像及び文献をもとに、調査・研究していく。道教的要素の抽出という作業にとどまることなく、舞楽の地方伝播と中央への還流という観点からも考察を加えていきたい。 実地踏査については、田植神事を中心として調査することとし、文献収集にも力点を注ぎながら、芸態・所作・装束・楽器・音楽・詞章等についての考察を行いたい。具体的には西日本を中心とする初夏の田植行事と正月の田植神事を重点的に踏査する。 詞章を中心とする検討作業を本格的に開始する。まず、中世成立の神楽台本、謡曲テキストを精査して道教的要素の抽出を行う。その際、現在の詞章との比較検討も併せて行いたい。また、音楽関係、装束関係については研究資料を収集するとともに、専門研究者や関係者の協力を得て情報収集に努めたい。 以上の調査・考察で得られた知見については、口頭発表もしくは論文として公表したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、図書費と旅費に重点を置いていく予定である。また、年度末には資料整理にアルバイト謝金を、年間を通して消耗品費を使用する予定である。
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