2013 Fiscal Year Research-status Report
日本文化における道教受容解明のための芸能に見る道教的要素の抽出
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24652169
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
樹下 文隆 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (70195337)
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Keywords | 民俗芸能 / 古典芸能 / 道教 / 国文学 / 禅文化 |
Research Abstract |
実地調査としては、広島県山県郡北広島町の新庄のはやし田、栃木県宇都宮市の宇都宮二荒山神社田舞、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の熊野那智大社扇祭(和歌山県)を検分し、芸能部分をDVDで撮影した。また、岡山県岡山市の後楽園で行われた哲西と神代の太鼓田植及び備中神楽、島根県出雲市の出雲大社「平成の大遷宮」奉祝行事として行われた隠岐国分寺蓮華会舞楽、福島県浪江町請戸の田植踊、岩手県山田町大浦大神楽、島根県益田市石見神楽横田社中の上演を見学し、DVDで撮影することができた。 学会参加で今年度は重要な成果を得ることができた。一つは同志社女子大学で開催された芸能史研究会第50回大会「藝能史研究の過去・現在・未来-史料としての映像記録」の第1会場「芸能史料としての映像Iー民俗芸能」で、昭和20-30年代の貴重な映像記録をはじめとして多くの映像記録を見ることができ、撮影記録の保存・公開の現状を知ることができて有意義であった。二つ目は上野学園大学で開催された岸辺成雄博士記念第1回東洋音楽史研究国際シンポジウム「唐代音楽の研究と再現」で、舞楽奏演時間の推移、田楽や能の太鼓と西域楽器の関係など刺激的な内容を含む発表ばかりであった。 絵画資料の調査として、東京国立博物館、京都国立博物館、高麗美術館等で開催された特別展などで道教関係絵画資料や芸能関係絵画資料を見ることができた。 具体的な研究成果としては、能《船弁慶》の陶朱公故事引用が室町後期に五山禅林で普及した道教趣味の現れであることを突き止め、中世文学会秋季大会で、「室町後期の能にみる漢籍摂取ー《船弁慶》の陶朱公故事をめぐって」と題して発表した。室町後期の五山禅林における道教趣味が与えた影響を今後の主要なテーマと位置付けることができた。 昨年度に引き続き、道教関係図書、中世芸能関係図書を購入した他、来年度に備えてパソコンとビデオカメラを購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市販の古典芸能・民俗芸能の映像収集は今年度ほとんど行えなかった。市場にあまり流通していないことが原因である。しかしながら、学会等での情報交換を通じて、入手はともかく視聴可能な映像の所在については概ね把握することができ、今後の研究の見通しを立てることができた。 本務に時間を取られて、実地調査や映像の視聴をあまり行うことができず、もっぱら文献資料に頼ることとなった。次年度は可能な限り実地調査や関係機関での映像視聴を精力的にこなしたい。 萌芽研究の性格上、網羅的な研究として出発したが、今日に残る芸能の道教的な要素の抽出にもっとも重要なのは、中世後期における元・明の中国文化・思想の日本への伝来・受容ではないかという見通しを確立することができた。その点では、本研究の目的は十分に達成されたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本への道教思想の流入は古代から連綿と続いていたことは確かである。しかし、現在の日本文化形成に与えた道教的な思想・志向については、ほぼ室町後期以後に限定してよいのではないかという見通しを得た。そこで、引き続き芸能資料の調査を継続することはもちろんであるが、室町後期の文化を支えた五山禅林に焦点を絞り込んでいくことにしたい。 まず、禅林文化に見られる道教思想を文献・絵画資料から調査し、それらが室町後期以後の芸能、能楽や神楽、舞曲、田植え歌、浄瑠璃、歌舞伎などに反映されているのか、その可能性に迫ってみたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1月以降に予定していた実地調査が本務との関係で実施できなかったため。 上半期での実地調査または映像所持関係機関訪問旅費に充てる。
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Research Products
(4 results)