2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24652172
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
中西 裕二 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50237327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 弘夫 東北大学, 文学研究科, 教授 (30125570)
白川 琢磨 福岡大学, 人文学部, 教授 (70179042)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / アメリカ / ヨーロッパ |
Research Abstract |
平成24年度は、以下の通り、3回の研究会と2回の現地調査を実施した。第1回研究会は日本女子大学西生田キャンパス(神奈川県川崎市)において6月30日(土)、7月1日(日)に開かれ、分担者の白川が研究報告「豊前神楽の系譜と改変」をおこない、本年度の研究方針と内容、現地調査の場所と内容について討議がなされた。第2回研究会は東北大学川内キャンパス(宮城県仙台市)において12月1日(土)に開かれ、分担者の佐藤が「日本の山再考―死者は山に棲むか」、連携研究者の鈴木一馨(公益財団法人中村元東方研究所研究員)が「『陰陽道』の有効性~なにを『陰陽道』とするのか?」と題する研究報告をおこない、また翌2日(日)に、山形県寒河江市慈恩寺にて慈恩寺の現地調査、聞き取り調査を実施した。第3回研究会は福岡大学(福岡県福岡市)において2月17日(日)に開かれ、松尾恒一(国立歴史民俗博物館教授)が「中世、興福寺修二会の儀礼─堂童子の祭儀をめぐって」、山口正博(九州大学大学院)が「松会の柱松の発生」と題する研究報告をおこなった。この日に合わせ、前日の2月16日(土)に大分県豊後高田市長岩屋の天念寺で行われた修正鬼会の現地調査、翌日の2月18日(月)に福岡県糸島市雷山の雷山千如寺、二丈吉井の浮嶽神社、一貴山集落の現地調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は概ね順調に推移している。平成24年度は研究会において本研究に参加している分担者、連携研究者の報告を中心におこない、日本の民俗文化研究の新たな視座の可能性を、文化人類学、民俗学、宗教学における儀礼研究、祭祀研究、芸能研究から検討することができた。その際、とくに宗教民俗文化の核として中世仏教に基づく寺社のもつ重要性が指摘され、その組織自体が近世・近代以降に宗教性が薄められ一般の村落に転化した山形県寒河江市の慈恩寺、大分県豊後高田市の長岩屋地区と天念寺、福岡県糸島市の一貴山地区の現地調査から、民俗文化形成における寺社のもつ意義の大きさが再確認された。また、個別の事例でいえば、中世仏教に基づく寺社のイデオロギーを実践する、組織上の末端として民俗芸能者が位置づけられること、山岳信仰を日本の「伝統的」=「古代的」な宗教形態と位置づける従来の言説に対する批判的視座の提供、中世仏教における日本的な正月儀礼=修正会のもつ重要性と、それの民間への伝播の問題などが報告され、本研究課題のもつ裾野の広さが各人の研究報告からも伺うことができた。また、民俗学を中心とする日本の宗教民俗文化研究において、神仏習合という視座の欠落は、同時に中世仏教のもつ意義を薄めており、民俗学のもつ近代性の問題点も研究会で多く指摘された。このような点は、本研究課題を実施するにあたり、従来の古典的な学問枠組みを超えた、inter-disciplinaryな共同研究が必要であることを意味しており、今後の民俗文化研究を実施する組織のあり方の見直しさえ必要なのではないか、という新たな視座も出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度と同じく2回ないし3回の研究会、及び現地調査を予定している。研究会においては、宗教民俗文化の形成過程に関し、さらに多領域の研究者をゲストスピーカーとして招き、研究事例を代表者・分担者・連携研究者間において共有していく。さらに本年度は、集まった多くの事例を分析する際の理論的枠組みについても検討を始め、社会史・歴史人類学といった視座について討議する予定である。また、本年度の現地調査については、平成24年度に訪問した山形県寒河江市の慈恩寺に関する現地調査、及び九州において神仏習合が色濃く残る芸能(佐賀県における浮立など)の現地調査を、予算の許す限り実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費も、平成24年度と同じく基本的には研究会及び現地調査を実施するための旅費に多くを充て、研究代表者・分担者・連携研究者の必要に応じて資料・史料購入、資料整理のための人件費、資料のデジタル処理に必要なパソコン周辺機器類の購入などに充てていく。なお、最終年度に海外の学会での研究報告を実施する予定にしているが、本年に始まる急激な円安と昨年来の原油高により、海外への航空運賃が高騰しているため、予算は切り詰めて執行し、繰り越し分が発生した場合は最終年度の海外渡航費に回す予定である。
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