2013 Fiscal Year Research-status Report
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24653019
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
弥永 真生 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (60191144)
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Keywords | イタリア / オランダ / スペイン / 国家賠償責任 / 不法行為責任 |
Research Abstract |
ほとんどのヨーロッパ諸国においては、監督当局の責任を合理的な範囲に限定する方策が講じられ、あるいは、限定されている。大きく分けると3つのパターンがあり、最も多いと思われるのは、イギリス(金融サービス及び市場法、スケジュール1、19条1項) 、アイルランド(1942年中央銀行法33AJ条2項) 、ベルギー(金融部門及び金融サービスの監督に関する2002年8月2日法律68条)、ルクセンブルク(1998 年12月23日金融部門監督委員会を創設する法律20条2項) 等、故意または重過失がない限り責任を負わないと法定するものである。第3の類型は、ドイツのように、銀行監督は公益のみのために行われると規定するものであるが 、これは、ドイツ等では、故意がある場合はともかく、純粋経済損害についての不法行為責任が認められるのは、第三者保護効のある法律の規定や契約が存在するときに限定されていることによる。 オランダにおいては、監督当局の責任が認められる余地があるとする裁判例を背景として、2012年6月7日法律 により、金融監督法及びBES金融市場法が改正され、オランダ中央銀行及び金融市場庁の損害賠償義務の制限が法定された。すなわち、故意または重過失がある場合を除き、責任を負わないとされた。同様に、イタリアにおいては、2006 年12 月29 日委任立法令第303 号により、2005 年12 月28 日法律第262 号の24 条が改正され、6-bis 項がイタリア中央銀行、証券取引委員会、年金基金監視委員会の監督職務の遂行にあたり、その機関の構成員及び被用者は故意または重大な過失をもってなした行為から生じた損害の賠償の責に任ずる」と規定するに至った。 これに対して、スペイン銀行自体の責任については明示的な責任制限は定められていないが、現時点では責任を認めた裁判例は見あたらない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欧米諸国を中心に、相当程度、資料は収集できているが、ポルトガル及びギリシャについては、まだ資料収集中である。 また、すでに、オランダ、ドイツ、スペイン及びイタリアについては、成果を公表しているが、スイス、オーストリア、カナダ及びアメリカについては、資料を読み込み中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、第1に、ギリシャ及びポルトガルにおける金融監督当局の責任に関する文献及び国家賠償責任に関する文献を収集する。 第2に、スイス、オーストリア、カナダ及びアメリカについて収集済みの文献を分析し、必要に応じて、追加的な資料を収集する。 第3に、上記の国々の制度について、研究成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年2月25日から3月3日まで、海外に調査のため、出張した旅費として、496,270円を要したが、旅費の精算払いにおいては、実際に研究者に大学が償還した時点(26年4月)に支出として処理するのが、筑波大学の経理の方針であるため、平成25年度の実支出額に当該金額が含まれていないのが、第1のかつ最大の理由である。 第2の理由は、物品費として、発注中の書籍等が年度内に納入されなかったことである。ギリシャ及びポルトガルといった、日本ではなじみの少ない国の資料を収集するのに予想外の時間を要している。 第3の理由は、その他として、データベース費用を支出する予定であったが、大学の予算で平成25年度は支出が認められたため、使用を要しない結果となった。 次年度使用額が生じた理由の第1に基づく額については、平成26年4月10日に支出がすでに認識されている。 第2の理由に基づく額についても、順次、書籍の納入が進んでおり、書籍の納入に伴って、支出がなされる予定である。 第3の理由に基づく額については、当初予定していたイタリアではなく、ギリシャまたはスペインのデータベースの平成26年度使用料に充てることを予定している。
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Research Products
(4 results)