2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24653019
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
弥永 真生 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (60191144)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金融監督 / 国家賠償責任 / 責任制限 / ヨーロッパ / 不法行為法 / 英連邦諸国 |
Outline of Annual Research Achievements |
ほとんどのヨーロッパ諸国においては、監督当局の責任を合理的な範囲に限定する方策が講じられ、あるいは、限定されている。大きく分けると3つのパターンがあり、最も多いと思われるのは、イギリス、アイルランド、ベルギー、ルクセンブルク、イタリア、オランダなど、故意または重過失がない限り責任を負わないと法定するものである(第1の類型)。注目に値するのは、イタリアやオランダは広義の金融監督当局が監督上の過失により賠償責任を負うとの判決が下された後に、このような法改正を行っているという点である。なお、スイスにおいては、金融監督当局は、本質的義務違反があった場合にのみ責任を負うものとされている。 第2の類型は、責任を負う相手方を限定するものである。たとえば、ドイツは、銀行監督は公益のみのために行われると規定する。また、オーストリアにおいては、金融監督当局は監督対象金融機関以外に対しては損害賠償責任を負わないものとされている。 第3の類型は、法令上、明示的な限定が加えられていないが判例において制約を課しているというものである。これに属するのは、拡大前EU構成国ではフランス及びギリシャであり、少数にとどまる。 他方、アメリカにおいては、連邦不法行為法の下で、政策に関する事項については、不法行為責任を負わないとされているため、いくつかの裁判例において、監督当局(連邦レベル)は損害賠償責任を負わないものとされている。また、イギリス、カナダ、オーストラリアにおいては、ネグリジェンスに基づく公的主体の責任が純粋経済損失について認められる場合はきわめて限定的であるため、金融監督当局による規制上の失敗を理由として損害賠償が認められた裁判例は存在しないようである(制定法に免責規定も設けられている)。
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