2012 Fiscal Year Research-status Report
法教育の一環としての法の文化と歴史に関する教育の研究
Project/Area Number |
24653026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
上田 理恵子 熊本大学, 教育学部, 准教授 (00332859)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 法教育 / 法制史 / 比較法文化 / 教員養成課程 / 教材開発 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実施計画で掲げた4項目に対応して、実施状況及び得られた成果は以下の通りである。 1. 県弁護士会との交流について。小学校教員および中学校社会科教員免許取得希望者の学生を対象に、熊本県弁護士会法教育委員会が主催する小・中学生向けのセミナー実演会を実施していただいた。教員養成課程の学生自身の関わり方、テーマの理解度(今年度は民主制)を確認することができた。このほか、熊本市消費者センターの相談員による特別授業では、消費者教育の立場からの法教育の可能性について議論することができた。 2. 家庭裁判所における手続の考え方と教材開発について。庁舎見学や家庭裁判所調査官へのインタヴュー、見学後の検討会を実施した。その結果、少年事件で示される教育的機能と教員養成課程での学びとの類似性に対する「気づき」をはじめ、学生の意識の変化と法教育に対する動機づけに結び付いた。熊本地方検察庁における「模擬取り調べ」でも同様の成果がみられた。 3. 基礎法学の成果の活用法および教材の開発について。 橋本康弘「外国人参政権の授業」(橋本・野坂編著『“法”を教える』明治図書、2006年所収)の授業案を学生たちと検討するなかで、「国籍を考える」授業案が提案された。このほか、「19世紀後半オーストリア民事訴訟における口頭審理と法曹たち」(法制史研究62号掲載決定)について、ソ連・東欧史研究会(2013年2月、西南学院大学)で報告を実施し、法学研究者以外の視点から、法制史を語るに際して説明方法や補足説明すべき点をご指摘いただいた。 4. 学会や研究会での情報交換について。国内では読書会コーディネーター養成講座、法制史学会、比較法学会、日本西洋史学会に出席し、国際学会ではドイツ法制史学会(スイス、ルツェルン)に出席し情報交換するなかで、授業の進め方やテーマの選択について示唆をいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画で挙げた各項目について、研究者個人で取り組める課題についてはおおむね順調に進めている。その一方で、学生や法実務家諸氏との共同作業についてはやや遅れが生じている。その理由として、「法教育」の基礎概念や動向に対する共通認識が形成されにくいこと、とくに学生たちの問題意識や動機づけに時間をとることが挙げられる。ただし、法の文化や法の歴史を教材化したり、具体的な教材を提案する作業を進めるためには省略できない時間であったと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の3項目について研究活動を進める。発表の場として文面では熊本大学教育学部の紀要のほか、全国誌である法と教育学会誌への投稿、また口述で発表する機会として、学会・研究会報告、学校への出前講座、教員免許更新講習等を考えている。 1. 教育現場等との「対話」について。熊本県内では、法務局や弁護士会等の積極的な取り組みが進行中であるが、道徳教育や学級活動への活用についても「法教育」についての理解が今少し浸透する必要がある。また、歴史や地理の教科に「法」の要素を導入する発想に対して教育現場から感じられた、学習指導要領の遵守や時間的制限等から生ずる反発に対処できるよう、方法を考えたい。 2. 国際社会レベルでの法関連教育について。情報収集とともに、個々の社会的背景との関連に注目したのちに、自分たちの社会を振り返る、という過程を重視したい。 3. 法制史や比較法の立場から「できること」を明確にする取り組み。高校生以下の生徒にとって法制史や比較法の手法は身近に感じられない。そのため、取り入れることの必要性や可能性を明らかにしたい。基礎法学の役割については、すでに法と教育学会の第三回大会「法学と法教育」でも扱われ、法曹希望者の初年次教育にとって有意義だったと聞く。ただし、学校教育関係者にとっては、ただちに理解しやすい内容ではなかったという反応も耳にする。したがって、研究課題にも明記したとおり「法教育の一環」として法の「歴史」「文化」面を教育することの意義を今一度、明確にする必要がある。現段階では歴史や地理を学ぶ過程で「さかのぼること」「比べること」の意義や問題点を示しつつ、法や制度について、それぞれの時間や空間のなかで理解できるような教材を工夫したい。さらに新たな視点をも適宜取り入れるため、法曹界と教育界のみならず、基礎法各分野の専門家との議論を深化させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)