2013 Fiscal Year Annual Research Report
海事社会の共同体概念の醸成に関する一考察―環境保護のための地域協力を中心として
Project/Area Number |
24653041
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 順子 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (00213942)
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Keywords | 海洋環境保護 / 国際的規制 / 地域的取組 / 保安 / 国際共同体 |
Research Abstract |
本年度は、ポートステートコントロールを管轄する地域機関であるMOUとアメリカのコーストガードについて検討した。MOUとして最初に発足したParis MOUは、発足時点で14カ国だったが、東欧を巻き込み2013年には27カ国に増え、さらに、ロシア、カナダも含むなど、海事社会に大きな影響力を持つようになっている。インスペクションは、IMO、ILOなどの国際機関の検討を経た条約の基準に基づいて行われるが、参加国に対してはポートステートコントロールを行うにあたって高い水準で質的統一がはかられるように検査官のための技術的訓練プログラムが定期的に行われている。参加国が増えたことにより知識、技術等の点で高い水準に達していない国もあり、こうした訓練プログラムは質的向上を当該地域間にもたらしている。しかも、こうした訓練プログラムには他のMOUからの参加もあり、ヨーロッパの高い基準が他のMOUへも波及していく効果もあり、Paris MOUを中心とした基準の策定をみてとれる。 このように環境に関し海事社会に大きな影響力を持つParis MOUに対し、アメリカは地域機関に参加することなく、コーストガードが独自にポートステートコントロールを行っている。アメリカは、同時多発テロの影響から「保安」に力をいれたポートステートコントロール制度を確立し、コーストガードがその役目を担っている。保安に主眼がおかれていることから船舶評価の項目に「旗国」、「旗国から委任された機関」もあげ、テロに関わるとアメリカが判断する国家、機関なら厳しい評価を行うことを可能としている。このように保安が中心となるため、地域的協力をあえて進めず、STCW条約の基準を満たしているカナダとだけMOUを締結し、両国船籍の定期船に限ってポートステートコントロールによるディテンションを受けないことを約束している。保安を含めたポートステートコントロールは共同体というより排他的な動向が強いといえよう。
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