2012 Fiscal Year Research-status Report
状態空間モデルによる家計行動規範の定量化とイベント・スタディによる要因分析
Project/Area Number |
24653049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
畑農 鋭矢 明治大学, 商学部, 教授 (00303040)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 状態空間モデル / イベントスタディ / 規範 |
Research Abstract |
消費関数のパラメターを時変推定し、その推移の幅が経済理論と整合的になることを確認した。言い換えると、ディープ・パラメターの変化を経済学的に解釈したわけである。今後も理論モデルの改良によって推定する方程式の精度を高めていく必要はあるが、基本的な準備は整ったと言える。 生まれ年、年齢、性、地域といった属性別の推定を行うことも重要な課題となる。注目すべき属性として、ほかにも学歴、職業、収入など、多くの視点が考えられる。どのような属性についてグループ化して推定を行うかは検討の余地がある。このパートも理論モデルと推定作業の反復作業が必要であり、一定の時間を要する。 ディープ・パラメターの時変推定に用いるデータ・セットは既存統計を活用したが、地域別統計については電子データ(家計調査、全国消費実態調査、全国物価統計調査など)の購入を行った。また、状態空間モデルの推定については、手法の進展が著しいため、最新の計量経済分析ソフトウェアを購入した。 推定作業と並行して歴史的イベントを表すダミー変数セットの作成を行った。この作業は中途であり、次年度以降に継続する必要がある。 このようにして得られたディープ・パラメターの時系列的変化に対して、イベント・スタディを適用することで、さまざまな歴史的イベントが家計行動規範に及ぼす影響を明らかにすることができる。この分析によって、政治的・社会的要因が経済活動に及ぼす影響を定量的に検証することが可能となり、国や地域による家計行動の異質性(同質性)を理解するための足がかりとなることが期待される。 属性別のイベント・スタディも重要な成果をもたらすはずである。行動規範の決定要因(イベント)について、属性による異質性が明らかとなれば、家計行動に関わる将来予測、政策効果の分析に限らず、マーケティング分野や投票行動分析など隣接他分野への応用も可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家計の消費・貯蓄行動についてモデルを特定化し、状態空間モデルを適用してディープ・パラメターの経時的変化を明らかにした。また、集計データに加えて、生まれ年や年齢、性、居住地域などの属性別にも推定を行い、属性による変化の違いを明らかにした。 この推定によって、一般には安定的と考えられているディープ・パラメターが経時的に変動する可能性を示した。また、その変動要因として家計の行動規範を考える点に本研究の斬新さがある。このようなアプローチにより標準的な経済モデルに行動経済学の知見を取り込むことが可能となった。 家計行動に関係があると思われる歴史的イベント(例:オイルショック、バブル崩壊など)について整理し、ダミー変数化されたデータ・セットを作成することについては作業が完了していない。推定されたディープ・パラメターの変化をイベント・スタディによって検討し、その時間的変動要因を明らかにすることも今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
推定作業と並行して、歴史的イベントを表すダミー変数セットの作成を行う。新聞記事検索や既存のデータベース検索によって主要なイベントは網羅できると考えられるが、古いイベントについては参考資料のコピー作業が必要になる可能性がある。また、研究代表者が取捨選択したイベントについて、ダミー変数化を施して表計算ソフトの形式で入力作業を行うことが必要となる。 次に、初年度に得られたディープ・パラメターを用いて、集計された家計行動のイベント・スタディを行い、ディープ・パラメターの変動要因を明らかにする。分析の成否は、高い説明力を有するイベントを探し出せるか否かにかかっている。故に、初年度に作成したデータ・セットに加えて、説明力向上のためにイベントの追加や更新が必要となる可能性が高い。そのため、2年目においても研究補助者の助けは必須である。 また、必要に応じてディープ・パラメターの時変推定をやり直す。このため、初年度の購入データのうち家計調査、全国物価統計調査を更新する(全国消費実態調査は平成26年まで更新なし)。また、社会・人口統計体系や民力などの網羅的な電子データを追加購入し、家計行動モデルの精度を高める。これらの修正は属性別の分析にも反映される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イベント・スタディの参考文献,家計行動の定量的分析の文献,近現代史の参考文献・歴史資料,などを購入予定である。 電子データとして、社会・人口統計体系CD-ROM、民力DVD-ROM、家計調査の更新、全国物価統計調査の更新が必要となる。 イベントスタディを行うにあたり、計量経済分析ソフトを購入する。
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