2013 Fiscal Year Annual Research Report
家賃補助の時間的変化が賃貸住宅居住期間に与える影響
Project/Area Number |
24653060
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
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Keywords | 住宅供給公社 / キャッシュバック制度 / 退去行動 / サバイバル分析 |
Research Abstract |
本研究では、家賃補助のあり方が借家居住期間に与える影響を行動経済学の観点から計量経済学的に明らかにした。 中堅所得層に対して良好な賃貸住宅供給を促進するために作られた特定優良賃貸住宅(特優賃)制度では家賃補助が入居後徐々に引き下げられ、支払い家賃が引き上げられる。ところが、大阪市では当初設定された特優賃家賃よりも近隣家賃が低下したために、特優賃の空室が増えた。そこで、空室率引き下げのためにキャッシュバックと呼ばれる入居当初の家賃を一定期間引き下げる仕組みが大阪市住宅供給公社で導入された。 大阪市住宅供給公社から入手した住宅の特性、家賃構造、キャッシュバック制度の有無、世帯の所得、家族特性などのデータをもとに、キャッシュバックの額およびキャッシュバック期間が、特優賃に居住する期間にどのような影響を与えるかを、ハザードモデルを用いて計量経済学的に明らかにした。次に、特優賃の居住者が特優賃から退出する際に、分譲住宅を購入するか、民間賃貸住宅に移るか、公営住宅に転居するかという複数のハザードを考慮したコンピーティング・リスクモデルを用いて、キャッシュバック制度と居住行動の関係を推定した。また住宅別データをもとに、キャッシュバック制度が空室期間をどのように引き下げるかを、ハザードモデルを用いて分析した。 これらの分析結果、キャッシュバックをもらった世帯で退去率が高いこと、その退去はキャッシュバックが切れる前後で特に高くなることが示された。また、この結果は子育て世帯においてはあまり見られないことがわかった。 この研究結果を「期限付きキャッシュバック制度が退去行動に与える影響:大阪市住宅供給公社の事例」という論文にまとめ、査読誌『都市住宅学』(No. 84,2014年1月31日、pp.90-98、森知晴・大竹文雄)に掲載された。
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