2012 Fiscal Year Research-status Report
消費者とサプライチェーンマネージメント;新たな需給モデルの構築
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24653069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
柴田 淳 大阪市立大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50281267)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オーダーメード社会 / サプライチェーンマネージメント |
Research Abstract |
本年度は、理論分析とケーススタディーを行った。理論分析においては、Ellison, G. and Elison, S.F. "Lessons About Markets from the Internet " Journal of Economic Perspectives 2005 を手がかりにして、インターネットにおける販売と店舗販売の類似点、相違点について整理を行った。最近までの関連研究の展開は経営学でハードライナーと呼ばれる商品群が中心となっていた。そこで行われていた実証的な研究においては、インターネット上での競争は、実際の店舗間の競争とさほど差がない可能性を示すものが多かった。これは二つに解釈することができる。ひとつは、消費者の行動が両者でさほど差がないことを示すものである。インターネットにおけるサーチコストは実際の店舗におけるサーチコストと差があまりないと云うこともできる。もうひとつの可能性は、実際の店舗間の競争が、消費者の行動も織り込んだ熾烈なものになっている可能性である。筆者は、実際の経済はこの両者が混合したものではないかと現時点では予測している。 ケーススタディーにおいては、当初の衣料と家電の予定を変更して、加工食品と衣料について行った。これは本研究年度において家電市場に大きな変化が起きているため、過去との単純な比較が困難であることによる。加工食品においては、プライベートブランドの進展に加え、取り扱うメーカーブランドの絞り込みの進展がみられた。これは、他の先進国での事例研究として、フランスで行ったものでも確認することができた。すなわち、フランスにおいては、ハイパーマーケットのプレゼンスが低下し、より品揃えが絞られた店舗形態を好む傾向が観察された。日仏で同様の現象が確認できたことは興味深いものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、人口増加時代の大量生産社会から人口減少時代の少量オーダーメード社会への転換のなかで、変化する生産、流通、消費システムを応用ミクロ経済学の見地から分析することにあった。本年度においては、応用ミクロ経済学の見地から分析するにあたっての、これまでの関連研究の取りまとめを行った。これによって、分析のフレームワークの基礎ができたと思われる。ただ、まだ実際の事例に応用できるモデルの作成は今後の課題である。 ケーススタディーにおいては、加工食品と衣料を対象に、流通システムと消費システムについて検討を行った。大量生産社会から少量オーダーメード社会への転換の端緒はつかめたものと思われる。当初予定に入れていた家電を含む他の商品群については、来年度以降の課題としたい。また、サプライチェーンマネージメントに表される生産システムへの踏み込みは再来年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、本年度同様に理論研究とケーススタディーを同時並行で行う。 理論研究においては、実際のケース分析に使用可能なモデル構築を目指す。既存研究がハードライナー系商品を対象としたものが多いことから、こうしたモデルがケーススタディーを進めつつある加工食品や衣料のような商品にどの程度利用可能であるのかを探った上で、展開を期したい。 ケーススタディーにおいては、これまで行ってきた加工食品、衣料についてさらにケースを集めることとする。さらに、本年度取り上げられなかった家電等についても、どのようなケースが利用可能であるか探ることとしたい。加えて、本年度行った他の先進国との比較も行いたい。同様の比較がシンガポール、台湾といった他のアジア諸国でも可能であるのかも探りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度予算では、欧米諸国での調査は1回に限られるため、次年度に予算を回す形とした。本年度はこれを活用して、複数の調査を行いたい。さらに、上述したアジア諸国での調査についても、費用対効果を見極めた上で、実現の可能性も探りたい。加えて、ケーススタディーと理論が合致するような対象がみられた場合には、価格データ等、市販のデータ購入にも予算の可能性を残しておきたい。
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