2012 Fiscal Year Research-status Report
ミャンマー経済の発展可能性と今後の課題ーイノベーション・システム論からの考察
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24653072
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡本 由美子 同志社大学, 政策学部, 教授 (00273805)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミャンマー / イノベーション・システム / 内発的発展能力 / 日本の対外経済戦略 |
Research Abstract |
平成24年度は、研究目的の①ミャンマーの基礎的な統計・情報・資料を整備、②ミャンマーの潜在的発展能力についての客観的分析、を行い、かつ、③ミャンマーを含めたアジア途上国に対する日本の対外経済戦略についての考察を一部行った。以下、研究実施計画書に沿って詳細に述べる。 1. ミャンマーの基礎的統計・資料については、日本では日本貿易振興機構や京都大学等を通じて入手をし、その整備に努めた。また、平成25年度3月、ミャンマーで現地調査を行い、日本では入手不可能な経済統計・情報・資料を収集した(実施計画書1)。特に現地調査で入手した情報はミャンマーの実情を知る上で貴重であった。 2.国際機関が所有している統計・資料、かつ、現地調査で得られたそれを駆使しながらミャンマーとその他のASEAN諸国との比較を行い、前者の全般的な現状把握を行った(実施計画書2)。 3.「イノベーション・システム論」関連の文献サ-ベイを行い、かつ、ヨーロッパで開催された学会に出席をし、最新の理論的・実証的研究動向の入手に努めた。また、上記1で言及した情報を基に、ミャンマーが現在比較優位を持つと考えられる産業に属する企業のイノベーション能力とそれを取り巻くイノベーション・システムについて予備的な分析を行った(実施計画書3)。この分析は、ミャンマーの潜在的発展能力を知る上で極めて貴重であった。ただし、現在、「イノベーション・システム論」の理論的展開が早く、引き続き海外の学会に出席をしてその動向に注視する必要があることがわかった。また、ミャンマーの経済・産業発展における今後の課題をより一層把握するために、平成25年度も引き続きミャンマーで現地調査を行う必要があることも明確になった(実施計画書4)。 4.ミャンマーを含めたアジア途上国に対する日本の対外経済戦略について前倒しで一部考察を行い、論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
主な理由は以下の3点である。 1. 1つめの理由は、計画以上に、調査研究に必要な統計・情報・資料が入手できたことである。ミャンマーについては2011年3月、民政移管が実現するまで外国との接触があまりなかったために、日本においても統計・資料が十分整備されてきたとは言い難い。しかしながら、民政移管後、急速に対外的に経済開放政策が進展をし、国内外の様々な機関がミャンマーの基礎的な統計・資料を整備しつつある。また、以前に比べるとミャンマーへの渡航もしやすくなり、研究に必要な貴重な統計・情報・資料の収集が当初計画していた以上に進展した。ただし、入手した統計・資料の質に関しては、十分に気をつけて使用する必要性があることはいうまでもない。 2.2つ目の理由は、イノベーション・システム論の文献サーベイが計画以上に進展をし、どのような枠組みやアプローチでよりミャンマーの潜在的発展能力や内発的発展能力を把握できるのか、明らかとなったことである。ただし、イノベーション・システム論はまだ確立された理論体系を有しておらず、それゆえ流動的であり、その動向には今後とも注視する必要がある。 3.3つ目の理由は科研費以外での研究との相乗効果である。したがって、当初計画をした以上に早くミャンマーを含めた日本の対アジア途上国経済戦略について考える機会があった。日本は科学技術に代表される研究協力をいろいろな枠組みを通じてアジア途上国に対して積極的に展開すべきであるが、これはミャンマーにも大いに当てはまると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、6月にヨーロッパで開催予定のイノベーション関連の学会に出席をし、イノベーション・システム論の最新動向の把握に努める。 第二に、ミャンマーで第2回現地調査を行い、引き続き、ミャンマーの潜在的発展能力、及び、内発的発展能力の把握・分析に努める。ただし、当初の研究計画を変更し、研究対象を製造業部門に絞ることとする。農業部門も当初の研究対象に含んでいたが、短期間でより厳密な研究を遂行するために、農業部門は研究対象から外す予定である。製造業では近年、外資系企業(特に日本企業)の進出が著しい繊維産業、及び、ミャンマー地場企業の潜在能力が高いと考えられる産業(漆器産業を含む)を取り上げ、イノベーション・システム論に依拠しながら、研究1年目よりさらに詳細な調査を行い、それに基づいて分析を加える予定である。 第三に、平成24年度と25年度の調査研究を踏まえ、政策的含意の導出を行う予定である。現在、日本の対ミャンマー経済協力がODAを通して急速に展開されつつあるが、残念ながら、各国の特徴やニーズにあったきめの細かい協力とは言い難い。また、日本は広域FTAを通してもアジア途上国のニーズにあった十分な経済協力を主導しているとは言い難い。したがって、本研究を通じて、日本の対ミャンマーへの経済協力や経済戦略のあり方について考える予定である。 第四に、分析結果に基づき論文を執筆し、何らかの手段でもってその成果を発表する予定である(学会での発表、雑誌への投稿、本の執筆等、いずれかまたは複数の手段を通して成果の発表を行う予定である)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、旅費 400千円 (1)ヨーロッパで開催される学会への参加渡航費200千円(内訳 交通費 114.6千円、宿泊費 4泊x @15.1千円、日当 5日x @5千円) (2)ミャンマーでの調査研究旅費200千円(内訳:交通費 94.5千円、宿泊費 5泊x @15.1千円、日当 6日x @5千円) 2.その他 100千円 (1)図書費50千円、(2)消耗品費50千円(印刷用カートリッジ2本、コピー用紙)
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