2012 Fiscal Year Research-status Report
わが国の地域社会が直面する課題を解決するツールとしての不動産金融の萌芽的展開
Project/Area Number |
24653075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
家森 信善 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80220515)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 不動産 / 金融 / 土地 / 担保 / 銀行 / アンケート調査 / 中古住宅 / 金融機関 |
Research Abstract |
平成24年度においては、金融機関の実務における不動産担保の役割についてのデータを集めるために、全国の銀行および東海4県(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)の信用金庫に対して、アニュアルレポートの提供を依頼した。全社分を確保することはできなかったものの、ほぼすべての金融機関情報を入手することができた。 別のプロジェクトで実施された金融機関の支店長向けのアンケート調査において、本プロジェクトに関連する不動産担保に関わる質問項目(具体的には、中小企業貸出における担保としての不動産の重要性についての支店長から見た重要性の評価および、その重要性の5年前との比較、不動産担保の掛け目の割合、および評価の洗い替えの頻度など)を採用してもらい、本プロジェクトの次年度の成果に生かすことが可能となっている。 また、国土交通省の「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」に参加することとなり、結果的に、金融機関、不動産業者、建築業者等からの意見聴取を聞く機会に恵まれ、実情把握が飛躍的に進んだ。 さらに、日本と似た金融システムを持つ韓国を訪問し、韓国銀行(日本銀行に相当)の担当者から韓国金融における不動産の現状についてヒアリングを行い、国際比較の端緒をつかむこともできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画では、第一にわが国の金融機関の実務の現状を把握するために、基礎的な統計を整理することとしていた。この点では、日経NEEDSなどの電子媒体で用意されているデータだけではなく、アニュアルレポートレベルでの詳細なデータの収集を進めた。さらに、3年目に本プロジェクトとして実施する予定であるアンケート調査の予備的な調査として、別のプロジェクトに便乗する形で、関連する調査を実施することができた。さらに、申請者にとって土地勘のある金融界だけではなく、不動産業界や建築業界に対する業界ヒアリングを実施することができたことは、想定以上の進捗であった。 第二の計画は、金融における不動産担保の学術的な研究の整理である。2011年以降に数多くの興味深い研究(完全に問題意識を共有するわけではないが)が公表されている。たとえば、Chaney, Thomas; Sraer, David; Thesmar, David, "The Collateral Channel: How Real Estate Shocks Affect Corporate Investment,"AMERICAN ECONOMIC REVIEW 102, 2012などである。こうした文献を比較検討しながら、本プロジェクトのオリジナリティを確立すべく努力している。こちらについては、想定通りの進捗であった。 以上より、全体として、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究は、第一に、予備的に実施することができたアンケート調査を活用して、問題の所在を明らかにし、より深掘りした調査を実施する場合の調査の着眼点を具体化していくことである。たとえば、金融業態ごと、あるいは金融機関の立地によって、中小企業融資における担保の扱い方が異なっているのか、あるいは、その重要性の変化の度合いが違うのかといった点である。こうした変化が見られるとすれば、次に問うべきは、なぜかであり、さらに、それによってどのような影響が出ているかである。そこで、本年度中に具体的な調査方法(おそらく、中小企業向けアンケート調査、ただし、金融機関向けとした場合は守秘義務などのガードが厳しく回答が得にくいことが予想されるので、匿名のヒアリング調査となることもある)を確定し、さらに調査の内容を確定する。たとえば、中古住宅市場の活性化に金融がいかなる役割を果たすかと言った具体的な形の政策課題への回答を得られるように質問を用意したいと考えている。そして、来年度の前半に調査を行えるように準備を整える。 第二に、そうした調査の内容を充実したものにするために、昨年度に引き続き、内外の研究動向を整理する。第三に、実態の把握についても引き続き、銀行界だけでなく、不動産業界、さらには実際の借り手である中小企業などに対してヒアリング調査を行い、実態の詳細な把握を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度においては、他の研究プロジェクトや政府委員としての活動の一環として、本研究に関する活動を行うことができたために、予定ほどの出費を行わずにすんだ。その分を、H26年度に実施予定のアンケート調査のサンプルを拡大して、調査の精度を上げることに使いたいと考えている。これに200万円ほどを使いたい。また、それに伴うアルバイト謝金を60万円程度予定する必要がある。また、今後は、初年度のような他の予算で充当できる予定がないので、ヒアリングに伴う出張旅費も必要になる。最終年度には、海外での発表を行うための英文校正、投稿料、海外出張旅費も必要となる。
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