2012 Fiscal Year Research-status Report
音楽祭の無形文化財としての価値継承のためのマネジメント:伝統、革新、市場
Project/Area Number |
24653090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
大木 裕子 京都産業大学, 経営学部, 教授 (80350685)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 音楽祭 / 伝統文化 / イベント経営 |
Research Abstract |
本研究は、芸術組織マネジメントの研究を蓄積してきた研究代表者と、豊富な実務経験を持ち音楽ビジネス、メディア研究、マーケティング、イベント経営などを専門とする複数の国内外研究者の協力により遂行されている。最終的には3カ年の計画で、詳細な事例研究とフィールド調査を併用する予定だが、初年度にあたる今年度は各種資料から試論的分析枠組の導出することに注力した。異質なキャリアを持つ複数の研究メンバーが参画することで、多角的視点からの経営学研究として、学術的貢献のみならず学際性・厳密性・実践性の高い理論構築を目指している。 主要音楽祭の実態について、制度的(政治、行政、法律、起業インフラなど)、技術的(ハイテク諸分野)、経済的(人口、市場など)、社会的(文化、イデオロギーの変化など)な事業環境条件との間でどのような適応的で発展的な成長を図ってきたのかを、ダイナミックに分析するために、関連する文献ならびに各種資料(1次資料および2次資料)を入手、渉猟してきた。また、これまでの研究を、それぞれの専門領域の立場から多面的にサーヴェイし、試論的分析枠組みを演繹的に導出してきた。更に、夏季にはプレ調査としてヨーロッパ最大の音楽祭であるザルツブルグ音楽祭、特徴のあるブレゲンツ湖上音楽祭、3か月に渡り繰り広げられる古代ローマ遺跡を利用したイタリアのヴェローナ野外音楽祭にてフィールド調査を実施し、問題点の精査をおこなった。 一方で、資料収集と意見交換のため、海外の研究者を中心に、研究機関、研究者および実務家との交流を行い、上記の分析枠組を確認すると共に、枠組の洗練化を図ることに専念した。同時に試論的な仮説の導出を確認することで、次年度に向けた研究の土台づくりを行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では欧州の歴史ある音楽祭を、組織としての知の継承が重要となる無形文化財として捉え、価値継承のためのマネジメント構築を目指している。このため研究では、第1に世界の音楽祭を体系化するためにマッピングをおこなう。第2に無形文化財としての音楽祭の構成概念を整理し概念的枠組を構築する。第3に主要音楽祭のダイナミズムについて歴史的及び現在の実態を測定、記述、比較、分析する。第4に事例研究から析出された諸仮説を、フィールド調査により検証する。という4点を主軸として推進することを計画してきたが、今年度の研究では、この指針に従って計画通り調査研究をおこなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は音楽祭のマネジメントの在り方を精緻化するという研究的側面だけではなく、音楽祭の伝統的価値・創造的価値向上のための手法を提示することで、広い伝統文化を持つ日本におけるクリエイティブ産業の国際戦略・国際交流といった実践的な側面への効果も期待できると考えている。 そのために平成25年度は、無形文化財の概念の整理と本格的なフィールド調査を主眼とする。パイロット研究の結果を踏まえて、分析枠組を精緻化する。これまでの事例研究を発展させ、さらに詳細な事例研究に着手する。夏季には本格的に国内外の音楽祭についてのフィールド調査を実施する。 さらに事例研究について情報収集を継続するとともに、論文としてまとめていく。また無形文化財の概念を整理するために、国内外の研究者との議論を進め、統一概念として共有化を図る。質問票による定量調査の必要性と可能性について検討をおこない、定性調査に反映させていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費 900,000(ザルツブルグ音楽祭・バイロイト音楽祭のフィールド調査、国内外の研究者との情報交換のための旅費) 人件費・謝金 100,000(先行研究、フィールド調査の資料を整理するための人件費、専門家に対する謝金)
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