2014 Fiscal Year Annual Research Report
音楽祭の無形文化財としての価値継承のためのマネジメント:伝統、革新、市場
Project/Area Number |
24653090
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
大木 裕子 京都産業大学, 経営学部, 教授 (80350685)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人材育成 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の最終年度として、世界で最も権威があると評されるバイロイト音楽祭とアメリカのサンタフェ音楽祭について詳細な事例研究を実施した。ここでは、アメリカのオペラ人材育成に大きな影響を与えてきたサンタフェ音楽祭について取り上げる。 アメリカのニューメキシコ州で毎年7月~8月に開催されるサンタフェ・オペラは、1957年に開始された北米の代表的オペラ祭である。サンタフェは、ニューメキシコ州の州都ではあるが、大都市からは離れた内陸にある都市で、オペラ会場は町の中心部からは7マイル離れた所に位置している。この劇場は、アメリカで最も美しいと言われる劇場である。砂漠に囲まれた大自然と一体感をなし、屋根はあるものの、外気に直接触れることができる半野外劇場で、舞台の向こうには自然の景色が背景として見える設計となっている。毎年8万5千以上を集客するが、その半数は25~30カ国の諸外国を含め、ニューメキシコ州以外から来訪している。プログラムは新作、稀少作品、標準的な作品と幅広いレパートリーで、これまでに161の作品を手掛け、16,000回の上演を行ってきた。特に、世界初演(13)、アメリカ初演(45)と、新たな作品を多く紹介しているのが特徴である。キャストには世界レベルの若手歌手を発掘して揃えており、ロール・デビューする歌手も多いが、質の高い公演には定評がある。そのため、著名な音楽祭が少ない米国では人気が高く、遠方からの集客力を持つ。変動価格制を早くから取り入れるなど、マーケティングにも工夫を凝らし、サンタフェオペラ出身のオペラ歌手は、今や世界各地のオペラ劇場で活躍している。 伝統を捉える上で、革新的な演目に取り込むサンタフェオペラのマネジメントは、ヨーロッパのバイロイトやザルツブルグ音楽祭とは異なるアイデンティティを確立するものとして、ベンチマークとなる。
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